新開くんがやってるのはサークル活動じゃなくて、部活だから、ハードなんだって。友達が言っていた。

初めて電話で喋った日から、ちょくちょく新開くんから電話が来るようになった。毎日、というわけではないけど、ちょくちょく。タイミングいいときに電話が来るものだから、わたしもついつい電話に出てしまっている。晩御飯を食べ終わった後、だとか。お風呂から上がってすぐ、だとか。


「今大丈夫?」


から始まる電話。大丈夫じゃないと答えたことは一度もなかった。新開くんとはどうでもいいような話とか、何の授業取ってるのかとか、試験だるいとか、普通の友達と喋ることと変わらないようなことを話していた。よく話す話題が尽きないなぁと思う。


でも、最近電話がこない。


いや別にね、新開くんのこと好きじゃないですよ。付き合っているわけでもない。だから毎日電話する理由なんてない。ないはずなんだけど、なんで、だろう。お風呂上がり、濡れた髪の毛を乾かすことなく、テーブルの上に置いたままのスマホと睨めっこ。メールが来てるわけでもなく、着信が残ってるわけでもなく。なんでこんなに気になってるんだろう。新開くんから電話がこないってこと。着信履歴を見て、カレンダーに目をやった。最後に連絡が来たのは一週間前だった。たったの一週間。


「されど 一週間」


いやいやいやいや
わたしは何言ってるんだ。
一週間くらい連絡来なくたって何も可笑しいことはない。だってわたし達は付き合ってるわけじゃないから。


「なんで待ってるんだよ、わたしの 馬鹿」


スマホを見つめていたって 鳴るわけがないのだ。
髪の毛乾かそうと思い洗面所へ向かう。髪の毛を乾かすのはどうも苦手だ。濡れた髪が顔にへばりつくのも嫌だけど。ゴォォと煩いモーター音。気持ち悪い温風。乾ききっていないけどもういいや。部屋に戻ってお水を一杯飲む。ふぅ。もうすぐ友達が見た方が良いって言ってたドラマが始まる。テレビでもつけようかな。チャンネルどこだっけ。あ、ここだ。友達から送られてきたメール確認しよう。たしか長いあらすじを送って来てくれたんだよね。テレビを見ながらスマホに触れる。不在着信 新開くんと表示されていた。・・・新開くん!?いつ?さっき?わたしが髪の毛乾かしてる時だ!!!新開くんの名前をみると途端に指が震えてくる。どうしよう。わたしかけ直した方が良いのかな。ぶるぶると震える指で画面をタップする。スマホを耳にくっつけて、プルルルという着信音に耳を傾ける。割とすぐに、その音は途切れた。


「千代ちゃん」
「こ こんばんは」
「初めてだね」
「え?」
「千代ちゃんから電話くれるの」
「そうだったかな・・・」


そうだったかなってそうだったんですけど。


「部活で合宿してたから、電話できなくてさ」
「そうなんだ」


どうしよう。新開くんの声聞けて、嬉しいって思ってるわたしが いる。新開くんの声に、耳を澄ませて聞いているこの時間が、たまらなく嬉しい。

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