筋肉痛、来ないと思ってたんだけど来たよ、俺にも。普段使ってない筋肉ってあるんだね。日曜の練習もヒーヒー言いながらやって、動きが硬いと監督に怒鳴られ、腹の中で監督も筋肉痛のくせにと悪態をついた。やっと筋肉痛が治った月曜日は振り替え休日。休日でも休むことなく部活をして、久しぶりの学校。いつも通りに教室へ行く。ガラリとドアを開けてすぐが俺の席。


「あ」
「おはようございます、高尾さん」
「花子さん、もうオリエンテーションないよ」
「知ってますよ」


花子さんがいた。いちゃ悪いことはない。でも登山はもう来年度までないし、オリエンテーションだってない。花子さんが学校にくる理由が俺には分からなかった。よくよく見れば伸びきった後ろ髪は切りそろえられ、少しいびつだった前髪もきれいなぱっつんになっていた。真ちゃんに「後ろがつっかえているのだよ」と言われて、自分がドアの前に突っ立っていたことにやっと気がつく。慌てて教室に入る。真ちゃんがフンと鼻で笑ったコノヤロウ。俺が席に座ると花子さんは「ちゃんと教科書持ってきました」と言い、一時間目の世界史の教科書を俺に見せびらかせた。見せびらかせなくても俺も持ってる。


「・・・何しに来たの?花子さん」
「今日は、勉強をしに」
「そうなんだ」





授業は淡々と進み、帰りのHRの時間がやってくる。担任も花子さんがちゃんと学校に来たことに驚いたようだった。少しだけ嬉しそうにも見えたのは俺だけだろうか。花子さんはずっと真面目に授業を受けて、コンビニのおにぎりをお昼に食べて、筋肉痛で痛そうな体で体育の授業を受けていた。こうしていればちゃんと普通の女の子の一人で、なんで今まで学校に来なかったか、全然見当もつかない。


「明日の日直は中里と高尾だな。じゃあ今日はこれで解散。はいさようなら」


担任が締めくくり、HRが終わる。帰り支度を始めた彼女を見て、気になったことがある。


「ね、花子さん。明日も来る?」
「来ます」
「何しに」
「日直しに」
「ギャハッ」
「ね、花子さん」
「なんですか」
「髪の毛切ったんだ、カワイイ」
「・・・照れます」
「なんで切ったの?邪魔じゃないって言ってたじゃん」
「高尾さんが見えにくいから」


花子さんはもう幽霊なんかじゃない

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テーマ「人外ファンタジー」
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