部活終了後、真ちゃんに「俺行くところあるから」と告げると、真ちゃんは不思議そうな顔をしたが納得したように「わかった」と言ってチャリアカーを置いて行った。あいつは多分俺が漕がないならチャリアカーは乗らないんだと思う。今日は学校に置きっぱなしにして帰ろ。そのほうが楽だ。あれ場所すげー取るし。学校から出て歩いて十分足らずで花子さんの済むアパートに着く。相変わらず暗いままの二階の端。この間と同じように恐る恐る階段を上る。インターホンが直ったかもしれないから一応押してみるけどやっぱり音はならない。はぁと息を吐いてドアをノックする。しばらくたって「どちらさまですか」とドアが開いた。この間はビビってすっかり忘れてたけど、誰が来るかと確認しないでドアを開けるなんて危なすぎんだろ。と思ったらちゃんとチェーンかかってた。


「高尾だけど」
「高尾さん」
「覚えてない?」
「覚えてます」
「よかった」
「わたしに何かご用でしょうか」
「うん」


5センチから一向に開かないドア。ご用はご用なんだけどさ、何も言わずにいると花子さんは扉を閉じた。


「ええええ花子さん!?」
「花子ですが、ご用とは一体・・・」
「よかった、開けてくれた」


俺女の子に避けられたりとか、そういう仕打ち受けたことないから、花子さんの行動には一々驚いてしまう。まあ扉開いたからいいんだけど。中はこの間と同じく灯りはついてなく真っ暗だ。花子さんの目だけぎらぎらしてて怖い。


「言い忘れてたことあって」
「なんでしょうか」
「てか電気つけない?暗くて花子さん見えないんだけど」
「・・・わかりました」


花子さんは玄関横のスイッチを押して明かりをつける。やっと花子さんの姿が闇から現れた。うん、相変わらず髪の毛は伸びきっているし、白いワンピースだ。


「ずっと思ってたんだけど前髪邪魔じゃね?」
「いえ」
「あ、そ」
「それでご用とは」
「あぁ、忘れてた。明後日登山のオリエンテーションがあるよ」


忘れてたなんて 嘘だけど。


「それってわたしも出なくちゃですか」
「だってホラ、登山行くんでしょ?」
「そのつもりですが」
「じゃあおいでよ 学校」
「そう言えば、なんで高尾さんはわたしに会いに来てくれるんですか」


会いにって、なんかそれ付き合ってるみたいじゃん。ちょ、えええ。でも考えてみたら会いに来てるのか、俺。


「隣の席だから?担任に頼まれたんだよ、この前」
「そうですか」
「うん」


ハイ、会話終了。


「じゃ、俺帰るわ」
「はい」
「・・・またね」
「・・・また」


玄関から出てパタンとドアを閉める。しばらくするとガチャンと鍵をかけられた。・・・でも玄関先の灯りはつきっぱなし。おやすみ、花子さん。

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