どうやらわたしはあの後気を失ってしまったらしくって、あろうことか、折原くんにおんぶされて家まで運ばれたらしい。重かっただろうな。だ、だいえっとしなくちゃ・・・!ダイエット成功した暁にはおんぶされる前戻って、「うわっ木村さん軽いな」って折原くんに思われるんだ。なんて本当にいまさらで、時間なんて戻るわけがなく、折原くんに対して申し訳なさと、恥ずかしさが募りに募って学校をさぼりたくなってしまいました。





Act05 ズル休みのブランチ





目が覚めて、目の前にお母さんがいて、びっくりした。だってわたしはさっきまで普通に折原くんと一緒に帰り道を歩いていたんだから。だから、目の前には折原くんがいるべきだったんだ。なんだけど、お母さんがいたので「あれ、お母さん」とわたしは呟いた。お母さんは笑って「やっと起きたのね」なんて言うので、「今、何時」と聞くと「もうすぐアミが毎週欠かさず見てるドラマが始まるわよ」と言った。ああ、もうそんな時間かぁ。なんて思って、大事なことを思い出す。あれ、折原くんがいない。わたしは折原くんと一緒に帰っていたはずなのに。ズキ、頭が痛くなる。あぁそっか。わたし緊張して、目をぎゅっとつむったら折原くんが大きな声でわたしを呼んで、はっとして、目を開けたら、ゴンってそれはもう盛大に電柱に激突しちゃって、そしたら反動で転んじゃって、頭打っちゃって、そうかわたし、気を失ったんだ。やっと思いだして、サァっと血の気が引いて、冒頭文に戻るわけなのです。頭がやけにズキズキ痛むのは、怪我のせいなのか、はたまた・・・。ドラマを見るのは辛いみたいなので、「録画お願い」とお母さんに頼む。お母さんは笑って「了解」と言った。あんまり心配してなかったようだ。わたしは健康体で、頭打ったくらいじゃ死なないんだと思っているんだろうなあ。きっと軽い風邪をひいたくらいに思ってるんじゃないの、お母さん。それにしても折原くんに迷惑をかけてしまいました。ごめんなさいと一言謝りたかったけど、わたしは折原くんの携帯の番号も、メールアドレスも、家電さえも知らない。個人情報に厳しくなった今、折原くんの個人情報を手に入れるのは難しい。仕方ない、謝るのは明日にして、今は怪我の治療に専念しよう。頑張れわたしの赤血球。いや、血小板、かな。生物も苦手だ。というか勉強全般苦手だ。今わたしの血液が頑張ってくれているので、わたしの頭は休憩しよう。おやすみなさい。

次に目が覚めたら、カーテンの間からまばゆい光が差し込んできていて、目がくらんだ。朝か。ん…?朝…?あ、学校。時計を見る。もう三時限目に突入してるじゃないか!やばいやばい、遅刻だ。むしろ欠席になっちゃうかな。急いでベットを降りる。昨日お風呂入ってない!お風呂入りたい!だってこのまんま学校行ったら、わたし、不潔だし。ズキ。なんか頭痛いなあ。膝も、ビリビリするし。リビングに行って「おかーさーん」と呼ぶ。いないみたい。洗面所に行くと、頭にでっかいガーゼ。何これ。寝てるとき気がつかなかった。あ、頭から血出てたからガーゼ貼りつけたんだ、たぶん。はがしたらまずいかな。きっとかさぶたになってるからだいじょうぶ。でもあまり強く髪の毛洗うとかさぶた取れちゃってまた血が出るかも…。そうだ、今日は学校休もう。メールメール。携帯携帯。友達に「今日は学校お休みするって担任に言っておいて」ってメールしなくちゃ。学校に電話するのって気が引けるし、だからと言って何も言わずに休むのも、よくない、よなぁ。一番の仲よしの、同じクラスのミヨちゃんにメールをする。「ごめんね、今日学校お休みする!担任に伝えといてー」文末に可愛いデコメでもくっつけて送信。実はわたし、あまり可愛いメールとかしたことない。友達はデコメとか、絵文字とか、顔文字とか、可愛いのいっぱいくっつけて、これでもかってくらい女の子っぽいんだけど、わたしのはどちらかと言うと男の子っぽいというか、クールというか、まぁそんな感じだ。つまり苦手。顔文字とか絵文字とかデコメとか。見てる分には、楽しいのだけれど。授業中にも関わらず、返信がすぐに来た。「わかった!伝えておくねー。それにしても折原くん、機嫌悪いんだけど、知ってる?」

あれですか。わたしが重かったから、機嫌悪いのですか。ごめんなさい。ダイエットしておきます。おんぶされることは、もう二度とないだろうけど。いつも笑顔を貼りつけてる折原くんが、周りの人にも分かるくらいに機嫌が悪いだなんて、ちょっと、それ、(わたしも見てみたかった…!)

お母さんが録画しておいてくれたドラマを見ながら、パンをかじる。でもドラマなんてちっとも頭に入ってこなくて、わたしの頭を支配しているのは折原くんのことばかり。折原くん折原くん折原くん。わたし、すごく折原くんが好きです。迷惑かけてしまったけれど、折原くんが好きです。今日は学校をお休みしますが、明日折原くんに会えるの、楽しみにしてます。だからどうか、風邪なんてひかないで、明日も元気に学校に来てください。わたし、折原くんの隣の席を、誰にも譲りたくないのです。今日の夜にはちゃんとお風呂入って、綺麗になって、明日はきっとわたしも学校に行くから。そしたら一番に謝るから、機嫌を直してください。

早く明日になーれ。もしわたしに時間を進ませることができたなら、人差指でちょちょいのちょい、明日にしてみせるよ。それでね、笑顔で折原くんに「おはよう」って言うんだ。でもやっぱり昨日に戻ろうかな。だって昨日、確実に折原くんはわたしの隣の席にいたから。






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