三連休中で、とっても良かった。だってあと二日、折原くんと顔合わせなくて済む。わたしは折原くんに迷惑をかけてばかりで、今回も、また、家までおんぶしてくれて、合わせる顔がないです。こんなんじゃ、好きになってもらえる前に、どんどん嫌われてしまっているような気がする。悲しいかな、これは現実だ。





Act9 会いたくて会いたくない人





あの後折原くんは「怪我、痕に残らないといいね」と言って、わたしの部屋を出て行った。わたしは玄関まで見送ろうと思ったんだけど、折原くんに寝てなよと言われてしまい、自分の部屋にとどまることにした。折原くんの背中を見送るのが、ものすごく切なくて、引き留めたくて、でもわたしにそんな権利があるはずがなく、背中に向かって小さく「ごめんなさい」と「すきです」を呟いただけだった。部屋、少しだけ片付けておいてよかった。
お母さんは相変わらずわたしのことは心配していないようだ。こんな短期間に二度も転んでしまうわたしのドジさに呆れてはいるようだったが、さほど心配はしていない。それがかえって良かったと思う。お母さんは折原くんのことをわたしの彼氏かと見当違いなことを考えていたようで、彼氏なんかじゃないと言うと、「そうよね、あんな素敵な人がアミの彼氏なわけないよね」と言った。どういう意味だ。確かに折原くんは眉目秀麗という言葉が似合う人で、パッと見知的だし、中身も知的だし、お母さんは、ドジな娘を家までおんぶで運んでくれたことで、優しさもあり溢れていると思っただろう。その通りなんだけど。だからこそ、わたしには不釣り合いな人だと思い、そんな発言をしたんだ。うん、自分でも不釣り合いだと思ってる。美人ではないし、頭はさほど良くない、体を動かすのは好きだけどドジが災いしていつも怪我ばかりだ。あはは、笑えない。こんなわたしが折原くんを好きでいてもいいのでしょうか、かみさま。火曜日が来ることがとても怖いのです。
今日は日曜日。今日を含め、連休はあと二日。二日間家に引きこもっていれば折原くんに会うことはないだろう。いつもなら会いたくて会いたくてしょうがなくなるところだが、今日は別だ。できることなら折原くんに会いたくない。おでこの傷が痛む。傷にならないといいなあ。足はにはたくさんの傷がすでにあるので、いまさら一つ増えたってどうってことない。折原くんには、怪我なかったよね。それならいいんだ。

「アミーちょっと晩ご飯の材料買ってきてー」
「絶対 イヤ!」
「じゃあ、アミの晩ご飯は抜きにね〜。パパと一緒に美味しいお寿司とりましょう。もちろんアミの分はないわよ!」
「わかったわかった、買ってくればいいんでしょ!何?今日の晩ご飯は!」
「いい子ねぇ、今日の晩ご飯は今はやりの餃子鍋にしようと思ってるの」
「また手間のかかりそうな・・・」
「何か言った、」
「ごめんなさい今すぐ行ってきます」

わたしは手提げ袋に携帯とお財布だけ入れて、家を飛び出す。家を出る前に手渡されたメモを見て、スーパーまでダッシュ。外に出たってことはつまり折原くんに出会う確率が高くなってしまったということだ。高くなると言っても、たぶん0.01%くらいだろうけど。それでも、少しでも出歩く時間を少なくして、会う確率を減らさないと。転ばないように注意して、走る走る走る。今日はどうか、折原くんが家で大人しくしてますように。そしたら会うことなく、わたしは普通にお買い物して、普通に、晩ご飯を食べて、美味しいなぁって、そうなるはずなんだ。それがいいのだ!



でもそうなるはずがないと、わたしは知っていたような気がする。

「もしもしお母さん?あのね、今日の晩ご飯はお父さんとお寿司食べてて」

「わたし?ちょっと友達とばったり会ってね、一緒にご飯食べようって・・・うんうん、そうなの。だから気にしないで。ごめんね、買い物しなくて」

「うん、ちゃんと帰る、大丈夫」

だいじょうぶ。






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