※グロ ヤンデレ臭




最悪な夢を見た。目が覚めて飛び起きると、寝巻は嫌な汗でぐっしょりと濡れていた。気持ちが悪い。隣にいるディーノはぐっすり眠っている。よかった。疲れてるからあたしが呻いてたって気づかないだろう。その方がよかった。

だめだ気持ち悪すぎて吐きそう。

力の入らない体をなんとか動かし、トイレまで行く。吐き気はあるけどなにも出なかった。気持ち悪い。
まとわりつく寝巻も、   自分も。


「うぇ・・・」


とにかくシャワー浴びて、着替えよう。さっぱりしよう。バスルームに行って、服を全部脱ぎ捨てて、冷たいシャワーを頭から浴びる。


脳裏に焼き付いて離れない、あの、最低な夢。



妄想リリアが夢に出てくることはよくあった。だからもうすでに慣れていた。リリアとディーノが楽しそうに話をしてる。それをあたしは遠巻きに見ている。ただの人形みたいに、感情がないみたいに、無表情に見ている。でも今日の夢はそうじゃなかった。

人の首を絞める夢を見ました。あたしの指で、手で、リリアの喉を締める夢を見ました。憎悪が籠ってました。食い込む指の感触がやけにリアルで、一度も誰かの首を絞めたことなんてなかったのに、初めからどうすれば彼女が死ぬのか分かってるみたいに、首を絞めていました。彼女はあたしの腕を掴んで精一杯抵抗する。だけど結局あたしの力には敵わなくて、握力がなくなった手はあたしの腕を触ることもできなくなってしまうのだ。そして彼女は 息絶えた。あたしはぼろぼろ泣きながら、彼女の首を絞めていた。



ああ、なんて醜い女。自分では気付かなかったけど、嫉妬に狂っていたんだ。もうやだ。こんな思い、したくないよ。夢だって何だって、人をころしたくない。でも、憎くて憎くてしょうがないんだ。リリアが、憎くて憎くてしょうがないんだ。あたしの、ディーノだったのに。


(だったの に?)

なんで過去形?今でもディーノはあたしのディーノだよね?もうわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないきもちわるい。自分が大嫌いで大嫌いで、いなくなってしまいたい。消えてしまいたい。もうこれ以上自分を嫌いになりたくない。これ以上自分を嫌いになってしまったら、自分が自分じゃなくなる。そしたら、ディーノが好きだったあたしじゃなくなってしまうことになる。そんなの嫌だ。消えてなくなりたいけど、ディーノのそばにいられなくなるのも 嫌だ。




「うわあああああああああん」

耐えきれずに、泣き出してしまった。心がパンクする。だめだもう、あたしって人間じゃなくなってしまうのかもしれない。頭も体も心臓も、誰かに乗っ取られてしまうかもしれない。でもそんなの嫌だ。ディーノに触れたいのに。




「アミ!?」
「・・・でぃー のぉ」
「どした!?大丈夫か!?」
「でぃーのお」
「大丈夫、大丈夫だから」


シャワーはあたしに雨を降らせたままだった。ディーノは寝巻のままあたしを抱きしめて、 大丈夫 大丈夫 俺がそばにいるから と言った。ごめんね、あたし、ダメな子で、ごめんね。弱くてごめんね。ディーノ、ディーノ、ディーノ。




「ひとを ころし ました」

「ゆめ の なかで だけど」

「あたし、もう あたしじゃ なくなっちゃい そう だよ」

「でぃーの がすきに なった あたし で いたい の に」

「でぃーの」


そんなあたしでも そばにていいですか。


ディーノがあたしに言っていた言葉はいつの間にか、 大丈夫 が ごめん に変わっていて、きっと二人の間にある溝は一生埋まらないんだろうなあ と思った。この呪縛から逃れることはできないんだろうなあ。この呪縛と付き合って一生ディーノのそばにいるなんてできっこない気がするけど、あたしはしたいんだ。


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テーマ「人外ファンタジー」
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