「もしもし獄寺くん?」

目が覚めたのは深夜2時。







「お願いがあるんだけど、一ヶ月くらい休み取れないかな」
『十代目!なんてこと言うんですか!今月は同盟マフィアとの会議が・・』
「アミが消えたんだ、俺が、探したい」
『そんなの、スパイの奴等に頼めばいくらでも・・・』
「俺が 探したい」


電話の向こう側で観念したように息をつく獄寺くん。本当にごめん、と心の中で言う。でも俺は強くなくちゃいけないから、頼られるような人間でいないといけないから、ごめんなんて言葉は使わない。本当は弱くて、馬鹿で、誰かがいないとなにもできないのに。かっこつけだな、自嘲気味に笑う。


『わかりました。会議は延期してもらうよう、掛け合ってみます』
「ありがとう」



大切な人ほど傷つけてしまう。何故だ?傷つけたくないと思っているのに。俺の心の迷いが、アミを傷つけた。俺の知らないところで、アミは泣いていたんだろう。なんで俺ってこんなに馬鹿なんだろう。自分が辛いときだけアミにしがみついて、部下に言えないような言葉、言って、慰めてもらって。結局俺にはアミが必要なわけで。

京子として?
京子の代わりとして?


ちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがう。



だってアミはアミじゃんか。他の誰かじゃない。


(でも、俺、本当は)







京子を愛していた。この世の誰よりも愛していた。彼女の為なら死ねると何度も思った。何度も愛を伝えた。結局助かったのは自分で、自分が彼女を、殺した。それでも俺は愛した。彼女しかいらなかった。新しい奥さんができても、俺はずっとずっと京子が好きだった。髪形が似てたり、後姿が似てる人とすれ違うたび、振り向いて、溜め息をつく。俺は弱い人間だ。

そんなときに現れたのがアミ。息をするのを忘れるくらいに、驚いた。生き写し、否、違う。顔はどこと無く似ていたけれど、別人だった。雰囲気が、似ていた。アミを纏う雰囲気が、京子だった。近づきたいと思った。そばにいて欲しいと思った。それはアミが、  京子に似ていたから。



「俺は、馬鹿だ」




心のどこかでアミに京子を求めていた。そんなんしたらアミが傷つくのは当たり前なのに、俺は。
血が滲みそうな位に拳を握り締める。日本に行こう。アミを探しに行こう。

確かに俺は京子を求めていた、アミに。でも今は違う。今はアミが欲しいんだ。
愛していた、京子を、体全部で、心全部で、愛していた。今でもきっと、愛してる。でもちがう、アミにそばにいて欲しい。京子がいないから、そんな理由もあるかもしれない。ただただ、そばにいて欲しいんだ。ただただ、恋しいんだ。アミに会いたい。こんなに強く思ったのは、初めてだ。



今更アミに「そばにいてほしい」なんて言ったら彼女は軽蔑するだろう。あたしを京子さんと重ねないで、って言うだろう。「愛してる」と言ったらアミは笑うだろう。どれだけあたしを馬鹿にしているの、と。

軽蔑されてもいい。馬鹿になんてしていない。
俺はいつしか、アミがいないと駄目な人間になってしまった。








もういいよ、理由なんて要らない。ただ、アミがそばにいてくれればもう、他はなんだっていいよ。

今、君に会いに行くから、



携帯で部下に電話し、ヘリをチャーターする。日本にいる部下にメールでアミの身元を調べてもらう。そうしたら後は自分で全部する。自分で、探す。


アミの机の上においてあった鍵を取る。GUCCIのキーケースは俺があげたもの。



ねぇ、一人で自己完結なんてしないで。二人で過ごした時間は、二人のものだろう?俺だけのものじゃないし、アミだけのものじゃないだろう?ねぇ、アミ、俺の中ではまだ終わってないんだよ。






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