暇な講義の最中、あたしの携帯が震えた。

 こっそりと画面を見ると 綱吉 の名前。電話に出るわけにもいかない。どきどきしたきもちは加速する。加速したままあたしは行動する。早足で講義を途中退出した。(単位足りるかな)なんて不安になったけど綱吉に合えない時間が増えて、講義を詰め込んだのをおもいだした。綱吉のことが一部でも頭に入ってくるとほかのことはどうでもよくなってしまう(あたし、きっと病気だ)

 綱吉から電話がかかってくるなんて珍しい。今回も一週間と三日ぶりくらいに綱吉の声を聞くことになる。どきどきとそわそわが入り混じる。なんて気持ちのわるい感情。愛してるとは程遠い。

 いつの間にか切れていた電話。走ってきたので息切れがする。二、三回深呼吸を繰り返した後、携帯のボタンを静かに押した。静かに、丁寧に。喉の置くがひりひりする。


「・・・もしもし」
「もしもし」
「久しぶりだね。アミ。元気にしてた?」


 なみだが出そうなのを、上を向いて止めた。安心というか、そんな感情があたしに涙を誘う。このままだと泣き声になってしまうから、綱吉があたしに話しかける言葉に 「うん」 と相槌をうってることしかできなかった。


「それでね」と綱吉が話をかえる。あたしは耳を澄ませた。
「午後から明日一日、休み取れたんだけど・・・・」
「ほんとう!?」
「うん。なんだかうれしそうだね」


 嬉しさのあまり、一瞬涙がとまって、また目頭が熱くなった。


「じゃ、今から帰って準備してるね」
「あ、授業中だった?」
「うん、でも大丈夫」


 綱吉と会えるのなら何だっていいや。留年したら学校をやめよう。それでこっちで就職しよう。親は怒るかもしれない。親不孝者だといわれるかもしれない。でもどうだっていいように思えてしまった。綱吉の近くにいられるのなら。なんだっていいよ、もう。


「アミ」
「ん?」
「待ってて、すぐ、行くから」
「うん」


 涼しい風が通り過ぎた。足取りが軽い。街路樹はのように赤く染まっていた。落ち葉のにおいがする。すっかり秋になってしまった。そのうちすぐ冬がやってくる。そのときも綱吉といられるのかな。冬も綱吉の傍にいられるのかな。


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テーマ「人外ファンタジー」
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