あたしの知らない綱吉がいっぱいいた。あの日、昼ごはんを食べ終わった後、ゲームセンター行ったり、バッティングセンター行ったり、駄菓子屋さんにいったりした。気付いたらもうすぐ夕御飯の時間で、家まで送ってくれた。たった半日で知らない綱吉をたくさん知ることができた。あんな風に屈託なく笑う綱吉を見たことがなかった。あんな風に拗ねる綱吉を見たことがなかった。完璧だと思っていた綱吉は、バッティングセンターで一球も打てなかった。「昔みんなからダメツナって呼ばれてたんだ」なんて綱吉は笑っていたけど、そんなこと想像できなかった。日本に来る前の綱吉なら。でもあの日の綱吉は、全然違っていて、大きな声で笑ったり、ものすごく悔しがったり、アイスを上手に食べられなくて、服に垂らしたりしていた。そんな綱吉が面白くて、お腹が痛くなるくらい笑った。いろんな綱吉を知ることができてよかったと思う。イタリアにいたら、きっと知ることはできなかっただろう。


あたし、綱吉のそばにいてもいいのかな。京子さんのなりかわりじゃなくて、あたしとしてそばにいてもいいのかな。







思い切って誘ってよかった。あの日以来一緒に遊びに出掛けたりするようになった。かっこいいところを見せようとして逆にかっこ悪いところを見せちゃったり。でもそんな俺を見てアミは笑ってくれたから、まあいいや。イタリアにいる頃はそんなに笑っていなかったけど、日本に来たら良く笑うようになった。思い返すとイタリアじゃ、ボスの重圧に負けそうでいつも怖い顔をしていた気がする。今はストレスフリー。毎日が楽しい。それもこれも、みんなアミのおかげなんだ。


普通の恋人同士みたいに過ごすようになって、一ヶ月がたった。この一ヶ月間、俺は耐えぬいた。アミが近くにいても、キスの一つや二つもしなかった。手をつなぐことくらいで、抱きしめたりもしなかった。怖い。アミのことは大好きだ。だからこそ、怖く感じる。もし、嫌われたら。とか考えると、どうしても怖気づいてしまう。こんな俺のことをアミはどう思っているんだろう。


「綱吉?電話鳴ってるよ?」
「ん。ああ、ありがとう。ごめんちょっと出るね――もしもし。うん、うん。わかった。すぐに行くよ」
「どうしたの?」
「・・・ごめんアミ、俺、イタリアにもどらなくちゃ」
「え・・・」
「今、ボンゴレが攻められてる。俺が行かないと」
「・・・つなよし」
「ごめん。もうしばらくここにいたかったんだけど」
「待ってて、全部片付いたら、また来る」
「・・・」
「大丈夫、すぐ来るよ」
「綱吉は、うそつきだ」
「え」
「きっとすぐ来るって言っても、来ないよ」
「そんなこと」
「だからあたし、着いて行っていい?」

アミの目は真剣で、俺は断れなかった。俺は頷くと、アミの手を引っ張り、ヘリの元へ急いだ。イタリアへ 行く。予定よりちょっと早いけど。アミも大事、ボンゴレも、やっぱり大事なんだ。



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