このヘリだって速い方なんだけど、俺としてはもっともっともっと速く早く速く速く、はやく飛んで、前に前に前に進んで欲しい。


「あとどれくらい?」
「・・あとー、四時間もあれば・・・」

心の中で舌打ちをする。四時間?もっと速くは進まないのだろうか。進めないのだろうか。眉間に皺が寄っている気がする。たぶん気じゃなくて本当に寄ってるんだと思う。ヘリはさっきよりも加速したようだ。燃料が日本につく前に底尽かない程度の速さで頑張ってもらいたいものだ。イヤ、底尽いても良いや。海にさえ落ちなければ。

仮眠を取ろうと試みるが、ウルサイし、眠気もやってこない。することが無くてイライラする。ふっ、とアミのあのにおいを思い出し、急に眠気が俺を襲う。




アミ、俺、アミが好きだよ。きっとアミを愛してる。確証はないんだ、だけどアミがいなくちゃだめなんだ。京子の代わりだなんて思ってない。アミのそばにいたい、アミにそばにいて欲しいんだ。
京子を愛してる、今でも愛しているということは、嘘じゃない。今でも愛してる、でもアミも愛してる。欲張り?どう言えばいいんだろう。自分の気持ちを言葉にできない。自分の考えていることを言葉にできない。もどかしい。今すぐ愛してるとアミに伝えたらどんなに楽になるのだろうか、それが例えアミに受け入れてもらえなかったとしても、俺はきっとすっきりすると思うんだ。

愛してると言い、嫌いと言われたってかまわない。
そばにいてくれと言い、無理だと言われてもかまわない。
俺がただ伝えたいだけで、一目見ることができたらそれで十分、なんて我侭で自己中心的なんだろう。自己満足愛に近いかもしれない。自分が、好きでいることができたら、それでいいだなんて、どんな切ないラブストーリーだ。

もう一度アミと恋人みたくすごしたいとは考えていない。ただただ恋しいくて、ただただ、会いたいだけなんだ。それだけなんだ。それ以上は望まない、アミのために。


(俺の、為には?)






「ツッくん」

はっとする、今、京子、俺を呼んだ?
眠っていたことに気がつく。
ここに京子はいない。だけど、俺を"ツッくん"と呼ぶのは、京子しかいない、京子。まだ俺の心の中にいるのか?

心の中にいる京子に出て行けとは言えない、言うつもりも無い。一生心の中にいて欲しい。俺が愛した人だから。

(でも、いいだろ?)
(そろそろ、いいだろ、京子)

他に誰かを愛したって、いいでしょ?
罰なんて、当たらないでしょ?
アミを愛しても、いいよね?








「ボス、そろそろジャッポーネです」

緊張する。
どんどん、アミに近づくたびに、どんどん気持ちに拍車がかかる。

「わかった、ありがとう」

キャバッローネファミリーと合同開発したパソコンのスイッチを入れる。雲の上でも使えるってすごいなーと関心。メールがいくつか届いていて、開くとアミの個人情報。頼りになるよホント。
メールの受信画面、少し下のほうへ行けばアミからのメールがある。開こうかどうしようか考えて、結局やめた。今アミからのメール見たら、きっと発狂する。



アミが思っているより、俺はずっとアミのこと、すきなんだ。だいすきなんだ。それを伝えたいがために、日本へ行く。大事な会議、キャンセルしちゃうくらいだし、俺って相当馬鹿な男だと思う。


灰色の雲の上、朝日が少し眩しいヘリの中、きみおもう


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