「うわああああああ!!!!」
「・・・うるさいな、何?」
「ごごごごごごg」
「だから、何?」
「ごきぶり!!!!」
「!!!!!!?」



恐る恐るあみのいるキッチンへ向かうと、確かにそこには黒く光るアイツがいた。カサカサカサと不気味に走り、物陰へと隠れようとしている。アイツを仕留めなければ、この部屋に平穏などやってはこない。俺は手に持っていた雑誌(自分が表紙)でアイツをバシン、とはたいた。




「・・・」
「・・・」

顔面蒼白とはまさに彼女のこと。

「だいじょうぶ、もうやっつけたから」

その雑誌はすぐさまゴミ箱へ。明日がゴミの日でよかった。アイツの残骸をなるべく見ないようにしてたくさんのティッシュで拾い、これまたゴミ箱へ。ティッシュを水で濡らし、アイツをつぶしたところを丹念に拭き掃除。これでよし。もう大丈夫。



「幽、すごいね」
「いや、けっこう気持ち悪かったよ」
「えー本当に!?全然普通そうだったよ!」
「だってあみが嫌そうな顔してたから、退治しないとって思って」
「わたしのために!?ありがとう!」

嬉しそうにはしゃぐ彼女が本当に可愛くて、


「う、わ。どうしたの、幽。嬉しいけど」
「うん」

ぎゅう、と抱きしめてみました。


「あはは。何、いきなり。幽ったら可笑しいの」
「うん」
「よしよし、わかった。ゴキちゃんが怖かったんだね」
「違う。というかなんでちゃんづけ?」
「ちゃんづけしたら怖くなくなるかなあと思って」
「怖くなんかない」
「そうだね」


良い子にしてご飯できるまで待っててよ、ね? と彼女に言われ、おとなしく待つことにした。今日の晩御飯は何だろう。キッチンから聞こえてくる彼女の鼻歌に耳を傾ける。音痴だなあ、相変わらず。


そこもまた、可愛いんだけどね。



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -