家に帰ってきたら大量の寿司、寿司、寿司、そして寿司。冷蔵庫にも寿司、テーブルの上にも寿司。食べかけの寿司、醤油猪口が二つに箸が二膳。なにこれ、と小さくつぶやいた。



「あ、おかえりー!」
「ただいま。どうしたの、この寿司の山は」
「今日幽のお兄さんが来たよ」
「それで?」
「大変だったんだよ、もう」


俺はキッチンから箸とビアカップを取ってきて彼女の向かい側に座る。彼女はどうぞどうぞ、なんて言いながら俺のビアカップにビールを注いだ。



「いただきます」
「いただいちゃってます」
「うん。・・・それで?」


そして彼女は寿司を食べながら語り出した。






「わたしがPS3と共にお留守番してたの。今日の晩御飯は何にしようかなーなんて考えながらね。あ、時間はそうだなー、たしかお昼の一時半くらいだったよ。そしたらさ、ピンポーンってチャイムが鳴ったの。この間通販で頼んだやつが来たんだーとか思って、何気なしにドア開けちゃったんだよ。そしたら!そしたら!なんとそこにはバーテン風の服を着た人が居るじゃない。わたしてっきり泥棒かなにかかと思ってさ、とりあえず逃げよう!って考えたの。でもドアにはその人がいて逃げられないし、窓からなんとかしようと部屋に戻ろうとしたら、その人もわたしのことを泥棒かパパラッチか何かかと勘違いしててさ、わたしを投げ飛ばそうとしたの!んで、、怖い声で”お前は幽の何なんだ”って言われて、わたしはとっさに恋人です!と言ったの。そしたら今度はストーカーかと勘違いされちゃって、急いで携帯の写メフォルダ開いて、幽とラブラブな写メを見せたわけ。それがきっかけでわたしが恋人だと認めてくれて、お互い自己紹介したの。で、お祝いで露西亜寿司ってとこのお寿司を出前でおごってくれました。さっきまで一緒に食べてたんだけど、急な仕事が入ったかなんだかで、”弟をよろしくな”と一言残し、お兄さんは帰?て行きましたとさ、チャンチャン♪」
・・・ようするに、昼間ここに兄が来て、あみと意気投合して、お寿司をおごってくれたと。後でお礼の電話でも入れておこうかな。それにしてもお寿司うまいな。でも生モノだからとりあえずテーブルを占領してるお寿司は早めに食べないと。

ずるいな。
俺は昼間のあみなんて、滅多にお目にかかれないのに、しかもさっきまで一緒にいたってことは何時間一緒にいたことになるんだよ。ずるい。なんか腹が立つ。これって嫉妬ってやつなんじゃないの?実の兄に嫉妬するなんてきっと良くないことだろう。でもなんかムカツク。だから今日は彼女を寝かせないことにしよう。いろんな方法で遊んであげよう。明日は久々のオフの日なんだし、夜寝なくたって明日一日中家でごろごろしてれば大丈夫。だから今夜は寝かせてあげない。





「あのー、幽さん?不敵に笑わないでくれます?」


とか言いつつ不敵に笑っているらしい俺のことを写真におさめる彼女。変な彼女だけど、一緒にいてドキドキして、心安らぐんだから、離れられない。ああ、なんでこんな女、好きになっちゃったんだろう。


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