二度目の秋が来た。


「幽ー」
「なに?」
「暑くなくなっちゃったね」
「うん」
「あーあ、今年かき氷食べ損ねた」
「あんなにアイス食べてたじゃない」
「そうなんだけどさ、やっぱりかき氷食べたかった」
「湘南のカフェのかき氷が美味しかったなぁ」
「ずーるーいー」
「夏ミカンのシロップが絶品だったよ」
「わたしも食べたい!」
「夏季限定だからもう終ってるんじゃないかな」
「ええええええ」


クッションを抱きながらゴロゴロとフローリングの上を転げまわるあみはとても不満そうに頬を膨らませた。ぷっと笑いが噴き出て、さらにあみは憤慨する。その姿がとても面白くて、可愛くて、愛おしい。俺だって一緒に食べたかったよ、かき氷。でもそれは許されない。


「あー」
「どうしたの?」
「食べたかった!」
「でもこれから食欲の秋だからさ」
「うん」
「さんまとか、戻りガツオとか」
「うん」
「かき氷も美味しいけど、秋の味覚だって美味しいじゃない」
「そうだね」


機嫌が少しずつ良くなってきたのか、あみは立ち上がりキッチンへ向かった。


「珍しく幽オフだったんだからご飯作るの手伝ってー」
「何すればいい?」
「大根すりおろしてー」
「了解」


渋々立ち上がる振りをして、あみの横に立つ。振りだということに気がついてないあみは「そうやって家でも動かないでいると太っちゃうぞ」と言った。太りません。あ、でも太るかも。あみの手料理は美味しいからね。大根とすりおろし器を渡され、ダイニングに戻って一心不乱にすりおろしているとキッチンからぶつぶつと独り言が聞こえてきて聞き耳を立てた。「幽はずるいよね、食べても食べても太らないんだから」「ぐっ・・・わたしなんてダイエットしてるっていうのに・・・」「それに秋は美味しいものいっぱいなんだから」「まあ腕がなるよね!ウン!」


「全部聞こえてるよー」
「嘘!」
「ほんと」
「・・・・」
「ほら、晩ご飯期待してるから、早く」
「幽ってやっぱりいじわるだ」


いじわるだなんて心外だな。くるくる表情を変えるあみが見たくてやってることなのに。もっと見たいよ、君の色んな顔。


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