「いだっ!!!」


噛みつかれました。


「てへ☆」
「てへじゃないよてへじゃ・・・」
「いや、ほら、幽の鎖骨があまりにも美しくてさ」
「意味わからないから」
「美味しそうだなぁと思って、つい ネ」


いきなりどーんと押されて、バスンとソファに倒されたと思ったら、のしかかれて、そして鎖骨に噛みつかれた。地味に痛い。もしかしたら歯型がくっきりついているかもしれない。のしかかったままのあみは満足げむふふと笑い、俺の胸にぴったりと耳をくっつけている。・・・・暑い。今何月だと思ってるんだ。節電のためにクーラーの温度は28度に設定してあるため、少しでも密着すると暑い。暑いのは苦手だ。だからと言って、あみを押しのけるわけにもいかないし、どく気配もないし・・・。あみは暑くないのだろうか。


「あみ?」
「心臓ってすごいね」
「なんで」
「だってずっと同じ速度で脈を打ってるから」
「・・・そう?」
「うん」


(意外と俺、 どきどきしてますけど)
それでもあみは ずっと同じ速度で脈を打ってる なんて言うのだろうか。あ、でも早い速度がずーっと続けば、そう言うのは間違いじゃないのかも。
二人掛けのソファから投げ出された俺の脚。小さくなってのしかかったまんまのあみ。クーラーの稼働音が満たす空間。ふわ、と香るあみの匂い。気づかれないように思いっきり吸い込む。それだけで俺の胸はいっぱいになって、愛しさがあふれる。暑いけど、あみを手放すつもりになれなくて、あみの頭と背中に手をまわす。嬉しそうにむふふとまた笑う。


「わたし ね」
「うん」
「すごくどきどきしてるよ」
「うん」
「噛みついたりしてごめんね」
「いいよ」
「歯型くっきり」
「ほんと?」
「うん。どうしよっか」
「いいよ、独尊丸に噛まれたことにする」
「バリバリ人間の歯型ですけど」
「はは。それでもいいよ、大丈夫」
「ほんとにー?」
「うん」
「・・・暑いね」
「暑い」


口ではそう言っても、俺から離れようとしないあみ。あみから離れようとしない俺。こんな夏も良いかもしれない。部屋を満たすのは、設定温度28度のクーラーの稼働音。あと俺の心臓の音と、あみの息遣いだけ。


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テーマ「人外ファンタジー」
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