こうしてキッチンに立っているとすごく落ち着く。リビングに面した小さなキッチンでわたしは包丁を握っている。刻むのはパプリカと玉ねぎ。玉ねぎが目にしみて泣きそうになるけど、手の甲でまぶたを優しく押さえた。フライパンにバターを溶かしてみじん切りにしたパプリカと玉ねぎを入れて、炒めていく。リビングから「いいにおいがする」と幽が小さく言ったのをわたしは聞き逃さなかった。玉ねぎが透明になったところで白米を入れてさらに炒める。白米が透明になったらチキンスープを入れて塩コショウで味付けをし、鶏もも肉を一枚入れて、そして炊く。キッチンタイマーを5分に設定して、キッチンを後にし、こたつで暖まっている幽の横に腰を下ろした。


「何作ってたの?」
「チキンピラフだよ」
「食べるの給食ぶりだ」
「えぇ」
「楽しみ」


本当に幽が楽しみにしてくれてるみたいで嬉しい。テレビでは今話題の歌手が歌を歌っているがわたしはこの歌が好きではない。中身のない歌詞のように感じてしまうから。それでも幽と見ているテレビならそれもまたいいかなぁなんて思ってしまうのは、わたしが多分、幽が大好きだからなんだろうなぁ。
ピピピとキッチンからタイマーが鳴る音がして、わたしは急いで立ち上がった。フライパンに蓋をしてまたタイマーをかける。今度は15分。キッチンから「あと15分でできるよ」と声をかけると「じゃああと15分、イチャイチャしようか」と幽は言い、テレビを消した。「15分だけだよ」と答えると「うん。おいで」と幽は腕を広げた。その腕に飛び込んで、思い切り息を吸い込む。幽からわたしと同じ洗剤の匂いがした。愛おしくなって腕の力を強くすると、幽は痛がって見せたけど、わたしのことを離そうとしなかった。


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