「ただいまー」「おかえり、早かったね」「うん。今日あみの誕生日でしょ?」「・・・え?」「ち、ちがうの?」「ううん。あってる、けど・・・」「ケーキも買ってきた。ホールで」「マジで!?」「うん。シャンパンも」「うわわわ!」「今日は誕生日パーティーだ」


幽はニコッと笑って(わたしには笑ったように見えた!)、スリッパをはいた。そう、実は今日、わたしの誕生日だったのだ。まさか幽が覚えているとは思いもしなかったけど。だから晩御飯だって普通の晩御飯だし、特に気合の入ったことはしていない。それに歳を重ねることが年々嫌になってきたから、今年は誰にも祝われないだろうと考えていたのに・・・・。そんなわけで今日の晩御飯は、


「刺身とてんぷらと茶碗蒸しです・・・」「思いっきり和食だね」「ウン」


シャンパンに合うとは到底思えない和食。どちらかと言わなくても日本酒が合うだろう。なかなか良い刺身だったから買ってきてしまった。てんぷらは近所のてんぷら屋さんのをお持ち帰り。茶碗蒸しはムショーに食べたくなったから作った。 とにかく先にご飯食べようか と幽は席についた。幽から受け取ったケーキの入った箱とシャンパンを冷蔵庫に入れ、ビールを取り出した。わたしも椅子に座って、ビアカップにビールを注ぐ。その間幽は醤油猪口に醤油を入れてくれた。ビールが注ぎ終わって 誕生日おめでとう と言われて、照れながら乾杯をした。晩御飯を食べ終わる頃には結構お腹いっぱいで、ケーキなんか食べられないと思っていたんだけど・・・。


「ハッピバースデーディアあみー」「ハッピバースデートゥーユー」


ろうそくの光が小さく揺らめいている。幽はきれいな声でハッピーバースデーを歌ってくれて、曲の終りにわたしの頬にキスをした。わたしはフーと息を吹いて火を消す。パチパチパチと拍手をされて、また少し照れた。


「甘いものは別腹って、本当だったんだね」「俺はもうムリ」


幽は口を手で押さえて思いっきり眉間にしわを寄せた。ケーキの残りは四分の一。わたしが四分の二食べて、幽が四分の一を食べた。さすがにこれ以上食べると太ってしまうので、余った四分の一はまた明日。丁寧にラップをして冷蔵庫にしまう。・・・ん?


「あっ!シャンパン飲むの忘れた!」「本当だ飲んでない」「今からあける?」「明日にしよう」「そう?」「うん。だって明日も一緒に居るでしょ?」


永遠なんてどこにもない。待っているのは終末だけ。それでも幽となら永遠だって信じられそうな気がするんだ。不思議なことに。わたしが そうだね と笑って答えると、幽はわたしの目をしっかり見て「君が生まれた今日に、一緒に居る事ができて幸せだ」と言った。そしたらすぐに「こっち見ないで、今俺すごく恥ずかしいから」なんてそっぽを向くもんだから、後ろから抱き締めて わたしも幸せだよ と言ってやった。言ったやった後にわたしもすごく恥ずかしくなって、キッチンに行き、お皿洗いを開始した。



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