「あみ」
「何?」
「これからルリさんが来るんだけど」
「――――!!!」
「相手、してあげてほしいんだ」
「・・・・」
「ストーカー被害に遭ってるらしくて、今居場所ないんだ」
「えぇ」
「彼女には、君が俺にとってどういう存在なのか、言ってあるから」
「ううう・・・」


無理。まともに彼女の顔見れないよ。でも幽のお願いだから、頑張る。もちろん幽も一緒にいてくれるんだよね?え、いないの!?仕事!?ちょ、ちょっと待って、わたしとルリさん二人きり!?ムリムリムリムリ!あーだめだ泣けてくる。ルリさんの存在はわたしにとってはある意味タブーだよ、うん。酷いなあ、幽。わかってるの?わかってないの?どっちなの?あーあー行っちゃった。帰ろうかなあ。でも帰ったらルリさん・・・。うん。大丈夫、大丈夫だ。










「おじゃまします」「どうぞどうぞ」「ごめんなさい、突然」「いえいえ、幽からお話は聞いております」「ありがとうございます」「ここじゃアレなんで、リビングにどうぞ」「はい。うわー!広い!綺麗!」「あ、ココ座ってください。今コーヒー淹れてきますんで」「おかまいなく。あ、ケーキ買ってきたんで食べませんか?」「いただきます」「座ってるだけでごめんなさいね」「いえ。インスタントで悪いけど、どうぞ」「ありがとう」「わあ!美味しそうなケーキ!」「事務所の近くのケーキ屋さんので、とっても美味しいんです。好きなのどうぞ」「うーん、悩むなあ」「ふふ」「これ!洋梨のタルト」「お目が高いわね。わたしはショートケーキ」「んー美味しい!生地はサクサクしてて、洋梨のコンポートは甘すぎず、タルトとあってる!」「美味しいでしょ!」「はいっ!」「・・・」「・・ルリさん?」「ごめんなさい、わたし、二人に迷惑かけて」「え?」「羽島さんから聞いたの。あなたのこと、二人の関係」「はい・・」「それなのに、世間はわたしと羽島さんが恋人同士だって、思ってる」「そうですね・・」「それが、くやしくて」「ちょ、ルリさん、泣かないでください」「だって、羽島さん、あな?のこと本当に大好きだから」「・・・」「いつもあなたの話をするとき、誰も見たことがない幸せそうな顔をするの」「・・・」「わたしは二人が、二人を、大切に思ってること、分かってるから」「・・・はい」「だから・・・」「ルリさん・・・」「心配しないで。わたしは羽島さんのこと尊敬してるけど、好きとかそういうのじゃないから」「はい」「世間の羽島さんとわたしは、仮の姿なの」「はい」「本当の恋人同士はあなたたちよ」「はい」「わたし、知ってるから」


泣きやんだルリさんはふふふ、と笑って、今度はわたしが泣き出してしまった。ずっと泣くのを我慢していたのかもしれない。自分自身が水になってしまうかと思えるほど泣いた。二人がキスをしているのを見て、悲しかったこと。その唇で幽がわたしにキスをしたこと。恋人と噂される二人。わたしは悲しくて寂しくて、仕方がなかったんだ。ルリさんはわたしの背中をなでてくれた。 めいっぱい泣いたらお腹すいたね とルリさんが言い、またケーキを食べ始めた。ルリさんから一口もらったショートケーキも、とっても美味しかった。



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