「ただいま」
「おかえりー」
「ラムネ買ってきた」
「まじで!!!!」


夏も本番。長かった梅雨がやっと明けて、いよいよ暑くなってきた。酷暑。毎日気温は40℃近くまで上がり、うだるような暑さが襲う。車であまりクーラーは使いたくないほうだが、この暑さだと仕方がない。クーラーをつけてしまう。

仕事からの帰り道、暑くなった車内の空気を出そうと窓を開けながら車を走っていた。たまたま見つけたラムネの露天。窓を閉めて、クーラーを効かせながら走っていたらきっと見つけられなかったであろう、小さな露天。幸い人通りも少なく、路肩に車を停め、その露天に向かった。
水槽にはたくさんのラムネ、ラムネ、ラムネ。氷水に浮かんでいて、とても冷たそうだった。ラムネを二本頼んだら、気のいいおじさんが一本おまけしてくれた。ラッキー。


そんなことがあり、ほくほくしながら帰宅。彼女にラムネの報告。嬉しそうな顔。暑い部屋・・・。



「クーラー、つけなかったんだ」
「うん、暑くて死にそうだよ」
「つけようよ、クーラー」
「・・・だって暑かったら幽が薄着になるじゃん。幽は寒がりだからクーラーつけるとすぐ上着着るしさ・・・」
「シャワー浴びてくるからそれまでにクーラーつけておいてね」
「・・・はい」


冷蔵庫にラムネをしまい、風呂場へ向かう。背後でピッピッとリモコンをいじる音が聞こえた。よかった、ちゃんとクーラーつけてくれたみたいで。









「クーラーは?」
「さっき消した」
「なんで?」
「だって、ラムネ飲むから」
「別にクーラー付いてたっていいじゃないか」
「暑いところでラムネ飲むと美味しさ二倍だよ三倍だよ!?」
「そう?」
「そ う な の !」

Tシャツに短パン、ラフな格好でリビングに戻ったらこれだ。さっきまでクーラーがついていたのは本当のことらしく、少しだけ涼しい。だがまた時間が経てば暑くなってくるだろう。夜だから昼間ほど室温は上がらないにしろ、きっと暑くなる。今夜も熱帯夜になるはずだ。


「しょうがないな、」


テーブルにはすでにラムネがセットされており、つまみなのかお通しなのかなんなのか、冷ややっこまで準備されていた。
椅子に腰をかけると、彼女は満面の笑みで俺にラムネを差し出してきた。せーのでプシュ、とラムネを開ける。ラムネ特有の、あの甘いにおい。




「夏だね」
「そうだね」


二人で一本ずつ開けた。残る一本は半分こにしようか。




ラムネ

(今年の夏、君と居られてよかった)



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