門の柱には帝光中学校の文字



ストーカーと帝光中バスケ部一軍




「大きい」
「マンモス校だからな」
「というかわたしめっちゃ部外者なんだけど大丈夫なの?」
「大丈夫。体育館はこっちだ」


手は引かれたまま、体育館へ向かう。帝光中の皆様の視線が突き刺さって痛かった。わたしが帝光中生じゃないからなのか、手を引いているのが赤司征十郎だからなのかはわからない。俯いて彼につき従った。だって今ここでわたしの知り合いは赤司征十郎しかいないんだから、彼に頼るしかない。あーノコノコついてくるんじゃなかった。


「赤司、遅刻なのだよ」と緑色の髪の毛をした背の高い人が現れた。背、高いけど多分中学生だよね・・・?眼鏡をくいっと指で上げると、太陽の光に反射して眩しい。

「悪い、真太郎。すぐ体育館へ向かう。先に始めていてくれ。メニューは昼休みに伝えたとおりだ」
「わかったのだよ。・・・時に赤司、その人は?」
「俺の愛おしい人だ」
「「!?」」
「手を繋いでいるのを見たらわかるだろう」
「・・・あまり遅れないようにしてくれ」
「わかっている」


愛おしい人って、わたし?







体育館へ着くと、ピンク色の髪の毛をした女の子を紹介された。桃井さんと言うらしい。赤司征十郎は颯爽と体育館の中心へ向かうと、練習を開始した。ギャラリーはいっぱいで、黄色い悲鳴が聞こえる。公開練習って、偵察の人たち相手だけじゃないんだね・・・。こんなにうるさくされたら練習なんて集中してできないだろう。

バスケのことはよく分からないけど、赤司征十郎がすごいことは分かった。赤司征十郎は点を取りに行くわけじゃないのに、赤司征十郎が作る点を取るまでの過程が、すごかった。他のメンバーがやっていることはバラバラなのに、赤司征十郎がまとめあげている。素直に、すごいと思えた。ストーカーだということを、忘れてしまいそうなくらい。


一緒に並んで見ている桃井さんが、視線はバスケ部に向けたままで「ミドリンから聞いたんだけど、赤司君と付き合ってるんだって?」とわたしに聞いてきた。


「・・・は?」
「最近の赤司君は変だと思ってたの!授業が終わると消えて、部活が始まるくらいにフラッと戻ってきてたの。しかも心なしかニヤニヤしながら!」
「・・・なにそれこわい」
「でもようやく分かった、彼女ができてたんだねー」


うんうんと一人頷きながら桃井さんは納得した。いやいや納得されちゃ困るんですけど。「付き合ってません」と答えると、桃井さんの視線がわたしのところへやってきた。


「付き合ってないの!?」
「はい」
「嘘!」
「嘘じゃないです」
「だって赤司君の愛おしい人だって・・・」

桃井さんとわたしで押し問答に夢中になっていると、ヒタヒタと近づく人物のことにまったく気がつかなかった。「桃井」背筋がゾクリとするような声色が聞こえて、その方を向くと、見下すような目線で赤司征十郎がわたしたちを見ていた。わたしたち、じゃなくて桃井さん、かもしれないけど。


「菜緒に余計なことを言うな」
「ご、ごめん」
「片思いだ」


高らかと、赤司征十郎は言った。

ええ、一方通行過ぎる片思いです。行きすぎてストーカーですやめてください。

桃井さんは驚愕の表情を浮かべる。赤司征十郎の後ろに居たおそらく帝光中学校男子バスケ部一軍のみなさんも、同じような顔をしている。わたしそろそろ帰っていいかな。

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