全国大会が近いんじゃないですか、赤司征十郎。



ストーカーに遭遇




茹だるのような暑さが続く毎日に嫌気がさす。こんな中部活動をしている生徒のみんなをすごく尊敬した。わたしには無理だ。比較的涼しいところでのんびりしていたい。あまり涼しすぎるのは嫌。比較的涼しい、で十分。そんなわけでわたしは塾へと通うのだ。あそこは涼しいからいい。勉強はできるってわけじゃないけど、嫌いじゃないから塾へ行くのも嫌じゃない。あー暑い。早く塾へ行きたいけど、走る元気は今、ない。赤司征十郎に付きまとわれていたときは、仕方なく全速力をしていたけど、その必要がない今、走る気力はないのだ。塾へ行く前にコンビニ寄って一涼みしよう。近くのコンビニに立ち寄ると「げっ」会いたくない人に遭遇した。


「菜緒」


入ってすぐに出たいと思った。「げっ」なんていう品のないわたしの声に気がついたのか、赤司征十郎はわたしの方を見、嬉しそうな顔をした。わたしのストーカーじゃなければ、普通のイケメンなんだけどなぁ・・・。出ていきたいけど、せっかく涼みに来たのに、出ていけない。わたしは他人のふりを決め込み、雑誌の売り場へ行った。適当に雑誌を手に取り、眺める。赤司征十郎はそれをいいことにわたしの隣へと並んだ。やめて、暑い。


「奇遇だな」
「・・・」
「まさかここで菜緒に会えるとは思っていなかった」
「・・・」
「これから塾か?」
「・・・」


無視無視・・・。赤司征十郎とわたしは他人。見ず知らずの真っ赤な他人。頭の中でそれを念じ、雑誌に集中する。あ、このワンピースかわいい。

ばさっ

いきなり目の前から雑誌がなくなる。驚いて、どこへ行ったのかとキョロキョロすると、赤司征十郎がわたしが今さっきまで読んでいた雑誌を持って、そして眺めていた。


「ちょ、何すんの」
「菜緒がそこまで興味を示すものだから気になってったんだ」
「・・・」


そこまで興味はなかったけど、ただ流し読みしていただけで。それでも赤司征十郎はふむふむと興味深く読んでいて、この人、本当にわたしのこと好きなのかもしれない、だなんて自意識過剰なことを考えた。


「菜緒」
「呼び捨て止めて」
「嫌だ」
「・・・」
「これなんか似合いそうだよ」


雑誌のとあるページを指さして、赤司征十郎はわたしのことを見た。それはさっき、わたしが可愛いなと思っていたワンピースだった。


「可愛い、けど(高い・・・)」
「高いな」
「うん」


って何わたし普通の会話してるの!


「も、もう時間だから!」
「やっぱり塾か」
「じゃあね!」
「会えて嬉しかった。またな」


そうやって、好意を一方的に伝えられると、残念なイケメンなはずなのに、ちょっとだけ、ドキッとしてしまう。

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