・・・変な人。



ストーカーと会話




どこへ連れて行かれるんだろう。ストーカーにこんな風に手を引っ張られて連行されるなんて、まずいんじゃないのかな。でも繋がれた手のぬくもりがなんだか懐かしくて、放す気になれなかった。可笑しい。だってこのストーカー(仮)とは初対面なはずだから。わたしと1メートルないくらい近くに、赤い髪の毛が揺れている。この前まではわたしの5メートル後ろを歩いていたというのに。慣れない速度で歩いたせいか疲れるのが速く、息がはずんできてしまった。そんなわたしを気遣うそぶりも見せず、ストーカーはずんずんと歩いて行く。

っていうか、なんでこんなに従順にストーカーの後ろを歩いているんだ?わたし。従う理由なんて、ない。


「痛い!」


ずっと繋がれていたから手がしびれてきてしまい、大げさな声を出して立ち止まった。さすがにストーカーも立ち止まってわたしの方を見る。間髪いれずに「なんなんですかさっきから。非常識ですよ、初対面なのに挨拶もせず自己紹介もせずこんな風に連れまわすなんて。あなた一体何様なんですかつーか誰ですか」と息つく暇もなく言う。ストーカーは冷静そのもので、表情を変えずに「オレは赤司征十郎。帝光中三年。バスケ部主将だ」と言った。うん、実は知ってました。ストーカーの正体。正体と言うか表の顔?裏の顔はただのわたしのストーカー(仮)だ!


「・・・そうですか」
「そうだ。それで」
「それで?」
「オレは自己紹介したけど、菜緒はしてくれないのか?」
「・・・菜緒って、」


呼び捨てで呼ばれるような仲でしたっけ、わたしたち。なんで名前知ってるんだろう。あ、ストーカーだからか。なるほど。名前知ってたら他のこともいろいろ知っていそうだなぁ。


「第二中学校三年、小森菜緒。帰宅部」
「知っている」
「じゃあなんで聞いたのよ」
「菜緒の声が聞きたくてね」


・・・正直、気持ちが悪いです。
確かに外見はかっこいいと思う。でもそれだけであって、よく知らない人に「声が聞きたくて」と言われても困惑するほかない。どう切り返したらいいかわからない。なんでこの人はこんなに、残念なイケメンなんだろう。喋らなければ、いや、喋っても普通のこと喋って入れば、きっと気持ち悪いだなんて思わなかっただろう。


「オレの名前聞いても、ピンと来ない?」


わたしを連れ出す前に見た、あの暗い表情を見せ、ストーカーは言う。ピンと来ないですよ。だって初対面だもん。あ、一目惚れ!ピーン!っていうそういうピンと来るってことなのかな。うーんうーん。でもどっちにしろピーンってこなかった。


「まぁ、いいや」とストーカーは息を吐き、繋いでいた手をやっと放した。



「恋をしないか」



「へっ?」
「・・・間抜けだな」


いやいやいやいやいやいや。
突然そんなこと言われちゃ、それこそなんて言ったらいいかわかんないよ。

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