気づいてしまったのだ。彼の存在に。





ストーカー疑惑





わたしの後ろ5メートルほど開けて着いてくる赤い髪の毛の人。知らない人。親から知らない人について行っちゃだめとは言われていたけど、知らない人について来られた時はどうしたらいいんですか・・・。ついてきてるって思うのはわたしの勘違いかもしれなくて、ただ単に行く先が同じだけで、たまたま5メートル後ろを歩いているだけなのかもしれない。だけど気味が悪い。まだあたりは明るくて、変質者が出るような時間帯じゃないはず。わたしの後ろを歩く赤い髪の毛の人が変質者じゃないことを祈った。わたしが小走りになると、その人も小走りになって、わたしが立ち止まると、その人も立ち止まる。わたしが振り返って、その人を探そうとするともの影に隠れるのか見つられなくなる。ちらりと盗み見るしかないのだ。


本格的にやばいかもしれない。小走りは止めてもうダッシュで塾まで向かう。後ろは見ないで、一心不乱に走った。


「つ、疲れた…」
「菜緒ちゃんお疲れー」
「疲れたー。ユミちゃん早かったね」
「学校早く終わったんだ」
「そうなんだ」


塾について教室に入り、机にドカっと荷物を置く。前の席に座ってるユミちゃんがわたしの方を向き、笑いかけてくれる。本当に疲れたよ。あれやっぱりわたしのストーカーだよね。だってわたしに合わせて歩いたり走ったり止まったりするんだもん。おかしいよ。わたしは特別可愛いわけでもなく、ごくごく普通の中学生で、そんなことされる理由なんてどこにも見当たらない。椅子に座って一息つくと、ユミちゃんが「なんでそんなに疲れてるの?」と聞いてきた。「話せば長くなるんだけどね…」と前置きをして、わたしは話し始める。学校からここへ向かう途中、知らない人に後をつけられたこと。でも気のせいかもしれないから誰にも言えなかったこと。赤い髪の毛の、白いブレザーの制服を着ていた人だってこと。ユミちゃんは目を丸くして「もしかして、あの人のこと?」と窓の外を指さした。ユミちゃんの指の先には、わたしの後ろをずっと歩いていた人が立っていた。


怖っ!!!!


「うん、あの人だ」
「わたしと同じ中学の人だよ」
「えっ!もしかして帝光中?」
「うん。有名人」
「本当に?」
「赤司征十郎くんだよー」
「知らない」
「まあ学校違うから知らないか」
「関わったこともないと思う」
「菜緒ちゃんバスケ部じゃないもんね」
「あの人バスケ部なんだ」
「主将だよ」
「すごい!どんな人なの?」
「同じクラスになったことないからわかんないなぁ。でも悪い人じゃないと思うよ」
「まぁ主将やってるくらいだもんね」


じゃあストーカーっていうのは、わたしの気のせい、かな?だってバスケ部の主将で、イケメンで、頭良さそうで、そんな完璧に近い人がわたしのストーカーだなんて信じられないもん。

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