目が覚めたとき、心配そうな顔をした赤司征十郎が一番最初に目に映って、思わず笑った。



ストーカーと記憶




「大丈夫か?」
「あーうん」
「来るのが遅くなって、悪かった」
「謝ること、ないよ」
「俺がもっと早く来ていれば」
「大丈夫だって」
「捕まえ、られなかった」
「そっか」
「本当に、悪かった」


赤司征十郎があまりにも謝るものだから、悲しくなる。だって赤司征十郎はわたしを守ってくれた恩人なのだから。
わたしを襲ってきた人はまだウヨウヨしているのか。そう思うと不安になる。薄暗かったから顔も分からないし、特徴もおぼろげにしか覚えていない。捕まえて警察に突き出すことは難しいだろう。







4歳の頃、わたしは誘拐未遂にあった。赤司征十郎と一緒に公園で遊んでいるときで、かくれんぼをしていた。親は親同士集まってお喋りするのに夢中で、わたしと赤司征十郎が遊んでいると思い、注意がそれていた。しかもかくれんぼだ。なかなか見当たらない。赤司征十郎が必死にわたしを探している間、犯人はわたしを連れ出し、車に乗せようとしたとき、赤司征十郎に見つかった。一瞬の間に怖い思いをしたわたしは一時的に記憶喪失になる。忘れることにより、立ち直ったのだ。親も思い出させまいとして、その頃の写真は全部捨てたんだろう。犯人は見つかって御用になった。わたしが病院から退院したときにはすでに赤司征十郎は引越しを終えた後だった。

怖い思いをもう一度したからなのか、わたしはついに思い出してしまった。



でも意外とへっちゃらで、それはわたしの目の前に赤司征十郎がいてくれるからなのかな、なんて思ってしまった。ほんと、どういう風の吹きまわしだよ。



「守ってくれてありがとう」
「え、」
「あの時も、今日も」
「あの時も?」
「制服泥ついちゃったー」


よっこいしょと言いながら立ち上がる。ポカーンとした顔の赤司征十郎が面白い。


「帰ろ、送ってくれるんでしょ?」
「あぁ、うん」


大きくなったね、せいちゃん。

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