暑いです。そりゃ八月だもの。暑くない方が逆に怖いわ。我が秀徳高校、男子バスケ部はIH予選敗退。みんな頑張ってたけどね。わたしも応援へ行きましたが熱気がすごかった。予選敗退していたけど、落ち込む暇もなく来年のIHに向けて練習を始めたらしい。八月入ってすぐ、緑間から電話があり、「暇なら夏休み合宿のマネージャーをしろ」とのこと。そんなわけでわたしとアヤちゃんは再び、男子バスケ部のマネージャーをやることになったのだ。




★★★





「海だねぇ」
「そーだねぇ」
「泳ぎたいねぇ」
「そーだねぇ」


砂浜で部員たちがランニングをしている。ここは波が高いから海水浴には向いてなく、海水浴客はほとんどいない。でも海を見たら泳ぎたくなるのがわたしでありまして。パラソルの下、汗を垂らしながら部員たちを眺めていた。


「…そういえばわたし近くのコンビニで見ちゃったの」と嬉しそうにアヤちゃんが言った。


「何を?」
「今日の夜、夏祭りなんだって!」
「えっ!いいなぁ!行きたい!」
「行きたいよねぇ、息抜きも必要だよねぇ!」
「うんうん」
「だから、今日の夜の自由時間、一緒に行かない?」
「行こ行こ!」


ストップウォッチを見ると、ランニング終了の時間を表示していたので、大声で「しゅーりょー!」と叫ぶ。わらわらと部員たちが肩で息をしながら集まり、アヤちゃんの作ったドリンクを飲んだ。




★★★





夜の自由時間は拘束されていない。門限までに宿舎に戻ればいいだけである。部長に出かけてきますの一言をかけ、アヤちゃんと夏祭りの行われている神社へ向かった。神社には夜店が並んでいて、美味しそうなん匂いを漂わせている。


「すごいねー」
「うん。何食べる?」
「ミホちゃん、お腹すいたの?」
「合宿で想像以上に体力使ってるみたい」
「晩御飯ちゃんと食べたよねぇ…」
「食べたよー」


夜にきらきらした夜店が映える。ここに立っているだけでワクワクしてくるのは多分夏祭りのおかげだろう。田舎町だと思っていたけど、意外と人がたくさんいるらしい。もしかしたら海目当ての観光客もいるかもしれないけれど。夜店を眺めながら歩いていると、目の前に男が立ちはだかり「ここら辺の子じゃないよね?」と言った。・・・もしかしてこれがナンパってやつですか。男は二人で、見るからにチャラチャラしてそうだ。苦手なタイプ。


「合宿で来てるんですー」
「(アヤちゃんなんでそんなこと言っちゃうんだ!)」


天然なアヤちゃんの発言に肝を冷やし、わたしは早くこの場所から脱出しようと、その作戦を考える。しかし人が多く、身動きがとりにくい状態だ。・・・どうしよう。


「もうすぐ花火が始まるんだけどさ、俺ら見晴らしのいいところ知ってるんだ」
「一緒に行かない?」
「花火!?ミホちゃん行こうよ!」
「だめだよアヤちゃん」


どうしようどうしよう、どうやってこの場から逃げだせばいいんだ。アヤちゃんはすっかり乗り気だし、そのおかげで男達もすっかり乗り気だ。まずい。


「そっちの子は乗り気じゃないみたいだし、君だけで行こうよ」


男がスッとアヤちゃんの腕に手を伸ばすよりも早く、わたしはその間に体を割り込む。反射で行動を止めた男達。キッと目を睨んだ。・・・ここからどうしよう。


「何をしているのだよ」


聞き覚えのある声が、背後から聞こえた。すぐ近くに、いる。


「…緑間」
「アヤちゃん大丈夫?」
「高尾くん!」


・・・らぶらぶですね、二人とも。付き合ってるんですか、付き合ってないんですか、どっちなんですか。


「ちっ」


緑間のでかさかげんに気圧されたのか、男達は舌打ちをし、立ち去って行った。さすが緑間、でかいだけはある。




「ありがと、緑間」
「…なんのことだ」


視界の端で高尾くんがめっちゃアヤちゃんに構ってるのが見えた。

ありがとうって言うのって、ちょっと恥ずかしいね。

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