「ミホちゃんさぁ、緑間くんのこと知らなかったんだって?」
「知らなかった。有名なの?」
「有名だよー、バスケ部のエースだって!」
「え、もしかしてアヤちゃんってば緑間にホの字なの?」
「ホの字って…」


苦笑いしたアヤちゃんも可愛い。
どうやら同じクラスの緑間真太郎は秀徳高校の有名人らしい。まぁあれだけ大きかったら嫌でも目立っちゃうからなぁ。でも全然知らなかった。どんだけぼーっと学校生活を過ごしてるんだわたし。いやいや、今年からは違いますよ。彼氏の一人や二人作って見せますよ!!それで青春を謳歌するんだ・・・!


「おい」
「……」
「おい」
「……」


図体のでかい男がわたしの席の隣に立ち、わたしに話しかけているようだ。この声の主のことも知ってるし、「おい」がわたしを呼んでる声だということも知っている。が、わたしの名前は「おい」なんかじゃない。なんでこいつはそんなに偉そうなんだ。

アヤちゃんは心配そうな顔をして、「ミホちゃん緑間くんに話しかけられてるよ…」とこっそりわたしに言ってくれる。にっこり微笑み返すとわたしは立ち上がり、奴の顔を睨んだ。身長に差がありすぎるから見上げる形になってるんだけど。椅子の上にでも立てば良かったか・・・そしたらギリでわたしが奴よりも大きくなれたかもしれない。


「なに?」
「さっきから呼んでいるのに無視をするな」
「わたしの名前は“おい”じゃないから返事をしなかっただけ」
「そうか」
「そうかって…」


むかつくー!なんなのこいつー!とイライラしていると、「ゴールデンウィークの間バスケ部のマネージャーになれ」と言われた。もちろんデカブツに。


「ヤダ」
「わたしやりたい!」
「アヤちゃん!?」
「ね、わたしもやるからミホちゃんもやろうよ!」


ニッコニコ顔のアヤちゃん。すごく可愛いです・・・!アヤちゃんに頼まれちゃあ仕方ないな。それにアヤちゃん一人を野獣ばかりのバスケ部に置いておくわけにはいかない。


「ゴールデンウィークの間だけ、なら」
「よし」
「バスケのこと何も知らないけど」
「…だろうな。ちなみにゴールデンウィークは合宿だ」
「マジで」
「ゴールデンウィークだからな」


あれ?今ちょっぴり笑いましたか、マタローくん。




★★★





それからというもの昼休みにバスケについての本を読み、バスケの基本知識をつけた。アヤちゃんが一緒なら頑張れる。なんでわたしなんだ?という疑問があったが、緑間がクラスで喋れる女子はわたしくらいなんだろうと思い、一人で納得した。もしかしたらわたしとアヤちゃん以外にマネージャーがいるのかなぁと思ったけれど、いなかった。二人まとめてマネージャーが見つかったから、頼まなかったのかな。

そしてついにゴールデンウィーク合宿―――!

東京から離れ、合宿所まで向かう。練習、練習試合、練習、練習試合の繰り返し。5月だって言うのに体育館は蒸し暑く、体力をどんどん削られていく。でもバスケ部のみんなの方がバスケしてる分消耗していて、ずっと疲れているはずだ。マネージャーなんてやったことない上に軽く見ていたから、本当に本当にしんどい。アヤちゃんは中学生の頃にバレー部のマネージャーをしていたらしく、ドリンク作りも、テーピングもほとんど完璧。可愛い子がいると部員たちも頑張れるのか、ドリンクをもらいに来て元気をつけているみたいだ。さすがアヤちゃん・・・!わたしにできないことやってくれる!そこに痺れる憧れるゥ!


「どうだ、マネージャー業は」
「辛いけど、泣きごと言ってられないよね」


休憩時間に緑間に話しかけられた。緑間も、すんごく頑張ってる。シュート外さないし、部として活動が終わった後に、自主練を毎日欠かさずやっている。体に鞭打ってシュートする姿を見て、デカブツと思っていたことを改めようと決めた。うん、緑間はただのデカブツじゃない。


「おまえはよく頑張ってると思うぞ」
「あはは、そんなことないよー」


ヘラヘラ笑うと、緑間は「今日の自主練、ボール出し手伝ってくれるか?」と言った。


「高尾とかの方がいいんじゃない?」
「アイツもアイツでやることがあるのだよ」
「わたしなんかでいいの?」
「いいのだよ」
「わかった」


視界の端でアヤちゃんがチヤホヤされているのが目に入った。さすがアヤちゃん。

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