春めぐる嵐の物語
 

 煌々と月が照る夜だった。
 冬枯れの草が風に弄ばれ、耳障りな音を立てている。格子から射し込む月明かりと共に、その音は容易に邸内に届いた。
「参議?」
 まだ幼さの抜けない少年の声に、男はハッと顔を強ばらせる。不安げに覗き込んでくるその瞳に、小さくかぶりを振った。
 懐に仕舞い込んだ刃物をしっかりと握りながら。
「……皇太子(ひつぎのみこ)……申し訳ござりませぬ……!」



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