一時の夢
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 数日後、新嘗祭当日はすぐにやってきた。
新嘗祭は霜月の丑の日から辰の日まで、四日にかけて行われる儀式である。初日の朝から臣下達は慌てた様子で最終調整に走り、そわそわと浮き足だつ者は少し落ち着かない様子であった。

 隆紀の友人達が話しの話題にあげていた舞姫――つまり五節の舞は辰の日の最終日の夜に行われる。 公卿、殿上人、国司からそれぞれ四名選ばれ、五度袖を翻しながら舞を舞うというものである。
 五節の前には豊明節会が行われ、紫宸殿にて帝が新穀や白酒黒酒を召し上がり、臣下もそれを頂く。今、紫宸殿ではちょうどその儀式の最中であった。

 いつもは陽気で朗らかな友人も、さすがに大人しく形式に則っている。上座にはこの国を統べる今上帝が坐っており、その周辺は緊張の他何ものにも形容しがたい雰囲気が流れていた。

 なんでも今上帝は、臣下に恐れられているのだという。隆紀はその現場に立ち会った事はないのだが、普通は帝を手中に収め操り人形にと考える大臣達も今上帝には畏怖の念を抱いているらしい。
 だが畏怖の声も聞こえるが、反面今上はこの国の治世を良くしようとしている、という声も聞こえる。





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