君をわすれじ
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 そっか、と呟き姫は再び空を見上げた。
いつもは小さな娘の姿が、最近は少し大きく見える。いや、実際には本当に大きいのかもしれない。
 ふと、季惟は気になっていたことを姫に問うてみた。


「そういえば姫、四十九日の話は誰に聞いたんだい?」

 
 先日、明石弁と話をする機会があったのでなんとはなしに娘に四十九日の話をしたか、と聞いてみた。しかし彼女は首を傾げ自分ではないと、言ったのだ。
彼女でないとすると、一体誰があの話を娘に聞かせたのだろうか、と季惟は少し気になっていたのだ。

 しかし姫は季惟を振り返ると、楽しそうに悪戯っ子のような笑みを浮かべた。


「ないしょ!」


 その笑顔は、母である雪花に酷似していた。


 ――死者に会いたい。
それは親しい者を亡くした者ならば、一度は考えたことのある願いであり、だがそれは決して叶うことはない願い。だが、残された者は授けられた生を力いっぱい過ごしていかねばならない。
 本当に人が死んでしまうのは、その人が忘れ去られた時ではないだろうか。忘却の彼方に追いやられた時、雪花は皆の心から消え、本当に死んでしまう。だが目には見えないが、雪花を忘れない限り彼女は季惟や姫達の中に在り続ける。


 もう春は、すぐそこまで近づいてきていた。





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