高比良の自分に対する想いがどういったものなのか…
「幼馴染」止まりなのか…
それとも……
真相は、由芽には分からなかった。
だが、身分の違う自分の事を「幼馴染」と言ってくれる高比良の言葉に…少しだけ甘えてみても良いのではないか…と
昔と変わらぬ景色の前では、そう思えてくるのだった。
「高比良さま、先ほどの件ですが…明日出仕する前に二の姫さま本人に聞いてはいかがですか?生憎、姫さまの写経が終わるまで、私は自分の局にこもっていなくてはならないのを思い出しました」
「ああ…昼間言っていたね。二の姫がお仕置きされる時は、いつも由芽にも飛び火するね…」
「私は、二の姫さまとはもはや一心同体だと思っておりますゆえ…」
「それは…逆に疲れるだろう?」
「ええ…まあ…」
自然と零れる笑い声…。
二人が語る思い出話の内容は専ら、二の姫の事であるが…。
それでも、思い出を共有できる幼馴染の存在に心が温まった。
(この温かな思いが続けば良いのに…)
一陣の秋の風が二人を包むように…
走り抜けていった…。
「あをもみぢ いろはうつれど 思ひ出づ そを語らむや ゆめの通ひ路」
(貴女も私ももう大人になってしまいましたが、幼き頃の思い出話しの相手ならいたします。また昔話をしに会いに来てください)
〜幕〜
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