君恋ふる、かなで
 


玉依姫の母の名を、珠子内親王という。
今上帝の母方の叔母にあたり、十四から二十二までの八年間に渡って賀茂斎院を勤めた彼女は、その楽への造詣の深さから、かつては四音の女名手とまで呼ばれた。
だが、彼女は斎院在位中にあるひとつの生命を宿した――それが玉依姫である。
未婚を前提とする斎院が異性と関係を持つことは強く禁じられており、そのため、この事件をきっかけに珠子内親王はその地位を退くこととなった。そして、母の実家である二条の屋敷で世間から見捨てられるように余生を送り、その生涯を閉じた。


その密通の末に生まれた姫を、人々は「禁忌」と「災厄」の象徴として忌み嫌った。


音足らずの琵琶を弾く哀しい女が産んだのは、罪を背負った可哀想な姫。
それが、玉依姫という少女であった。


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