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それはあまりに夢のように始まった出来事で。
もう、先生じゃないって分かってるのに呼び名ひとつ変えられなくて。
でも、あなたが好きなんだ。
先生が…っじゃなくて豪炎寺さんが一人でシャワーを浴びてるところへ飛びこんだのもホントに『怖い夢を見た』からで。
とにかく、怖くて…………淋しくて"先生" に縋った。
でも、シャワーの下で僕を抱き止めてくれた彼は、とても思い詰めた顔をしていて。だから―――今すぐに抱かれたいって気持ちが溢れたんだ。
「まだ抱かないつもりが、お前に……すっかりタガを外されてしまったな」
身体はまだ子供だが…………
「中…はしっかり18だった」
「っ……」
ごっ豪炎寺さんのばかっ……てか、えっち!!
な、ナカはオトナって何かすごく卑猥な響き。
しかも耳元で囁くそのセクシーな声はもう重罪。
結ばれたあと意識が遠のき………気づいた時には濡れた体がすっかりキレイになって、彼に腕枕されていた。
僕たち、やっとひとつに………なれたんだよね?
全部入らなかったけど、丁寧に気遣って抱いてくれた。
おかげで体が痛んだりはしていないけれど、彼が通った場所だけがまだ頼りなく火照っている。
「服着るか」
「ううん。このまま朝までいたいな、いい?」
豪炎寺さんが………照れて頷く。
そして、布団を僕の顎先まで引き上げて「体…冷やすなよ」と護るように大事に抱いてくれて。
腕の中からうっとりと見上げると、笑むように目を細め、まっすぐに見つめ返すその深い黒曜色に引き込まれそうだ。
こうして逞しい胸に抱いて、この魅惑的な目で……この人は過去にどれだけの女の人を夢中にさせてきたんだろう。
胸がキリキリと締め付けられる。
こんなに切ない痛みは初めて…………僕はぎゅっと目を閉じて、豪炎寺さんの肩先にかじりついた。
「…………どうした?」
「ん…何でもない」
切ないのと、何だか胸の奥がチリッ焦げ付くような感覚……それに、何だか下のほうとか体の奥がムズムズしてくる。
「顔が赤いぞ。熱でもあるのか」
優しく君のおでこが僕のおでこにくっついて。
大丈夫と分かったからか、ほっと息をついて離れる。
「熱い………」
「………?」
「もう一回触って」
フッ……と微笑って前髪を掻き上げるように
君の手が額を覆う。
「違う…………」
「…………?」
「体の奥だよ」
「!!」
豪炎寺さんによじ登るように体の上に重なると僕の
太股に、豪炎寺さんの隆起が押し上げるように当たってる。
「…………無理は止せ。最初から飛ばすと…」
「だめ。くるしいんだ」
「っ…………」
「早く、豪炎寺さんのじゃなきゃ…とどかないから」
「っ……しかしお前は……」
「ナカは大人って言ってくれたじゃないか?!」と僕はさっきの彼の言葉を繰り返す。
「はぁ?!」
豪炎寺さんは眉間に皺を寄せ、僕をいぶかしげに見る。
そしてハッとして「バカ、そういう意味で言ったんじゃない」と慌てる。
「え、だってナカは18才だ…って」
「"中身" と言ったんだ。人間的に成長していると、な」
「え…………」
拍子抜けしていた僕の中に、するりと指が挿し入れられた。「ひゃっ」
「だが、もうそんなことは――どうだっていい」
数時間前に解されたばかりのソコはたちまち複数の指を根元まで受け入れてしまって。
そして豪炎寺さんは僕の耳元で熱っぽく囁いた「どこが………熱いか言ってみろ」と。
「や、っあっ………」
「っ確かに…中は……俺を惑わす程オトナだな」
向き合って横たわったまま両脚を持ち上げられて、なすすべもなく豪炎寺さんのを奥まで突き立てられてしまい、襲い来る快楽に身を震わせる。
「キツいな……痛くないか?」
ああ………こんな体のおくで……ごうえんじさんを
感じられるのが嬉しい。
「やだっ!へ……んなとこ…………当たるぅ」
「ここが………悦いのか?」
グイッと角度を鋭くして、弱いとこ攻められて。
それに…………また彼の声が、発情した雄の声色になってるのが分かってゾクッと鳥肌が立つ。
「少し……深くするぞ」
「ひゃ……ぁん」
ぐぃっと脚をさらに開いて奥まで貫かれると、今度はお腹のなか
にズンと圧力が伝わるように響いて、ああ……もう僕のナカは豪炎寺さんでいっぱいだよ。
「ぁっ……ああっ……ぃたっ」
「…………痛い?」
「ちがっ。きも……ちぃ……」
「俺もだ……吹雪」
愛してる―――と。
でも
それにしたって
何でこうなっちゃったんだろう。
気づくと朝で。
頭が痛くて吐く息や喉まで熱い。
もちろん体も軋んでる。
ベッドは昨日激しく交わった彼の広いベッドじゃなくて、僕のベッドにいてパジャマを着ておでこをタオルで冷やされていた。
「…………スマン」
「………………」
猛反省してる豪炎寺さんの姿が可笑しくて。
てか…………嬉しい。
どんなに背伸びしたって届かない、雲の上の人だと思っていたのに。
君が、すごく近い。
手を伸ばして、抱きしめてあげられそうな程―――。
「とにかくゆっくり休め」と心配そうに僕の顔を覗き込みながら彼は言うから、僕は素直に頷いた。
「休むよ。だから………」
僕は豪炎寺さんを見上げてにこっと笑って言った。
「治ったら、またシてね」
見かけは天使、中は小悪魔だ…………。
イシド先生と吹雪くん初体験*完
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