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love affair4

綺麗な瞳に涙を浮かべて揺らされながら、士郎が声を殺しているのは……苦しいからなのかと最初は思った。

「辛いのか……?」

士郎は黙って首を横に振り、しなやかな脚を腰に巻きつけてくるから豪炎寺も堪らない。
突きながら増幅し動きも激しくなって、結合の快感がさらなる高みへと押し上げられる。
士郎を置いていってないか、それだけを気にしながら……

「このまま……イくぞ」

口元を隠したまま僅かに頷く士郎の締めつけの中で、豪炎寺も絶頂の熱を放つ。
「士郎……」
細かく震えて崩れてしまいそうな身体を抱きしめて、耳元で名を呼んだ。
すきだ……と口にはしないけれど、伏せた睫毛に溜まった涙に見惚れ、口づけで拭いながら結合をほどいていく。

「苦痛を我慢してたのか?」

「……してないよ。どうして?」

「息を……ずっと詰めてだたろう」

「ああ……それ……」
腕のなかの至近距離で士郎は目をそらした。
「やめてって言っちゃわないように必死で呑み込んでたんだ」

「……?」
「言っとくけど……」
士郎の顔が赤くなって下を向き、小さな声で諭すように言う。
「“やめて”っていいたくなるのは……嫌な時だけじゃないから。おぼえといた方がいいよ」
「っ……」
おい。それは「止めてほしくないくらいよかった」と言われたってことだよな?
豪炎寺の喉元まで、そんな問いが出かかるが……今でもいっぱい一杯の士郎に、羞恥の追い討ちをかけるのは控えておいた。


「あ……」

飛沫に塗れた身体を離そうとすると、士郎が眉をひそめて小さく首を振りながらしがみついてくる。
自分のなかで豪炎寺の脈動が感じられなくなったのが心細くて―――無意識に彼の胸に頬をすりよせ鼓動を探しているのだ。

「………このまま寝るか?」

鼓動が聴こえるポジションに落ち着いた士郎は、豪炎寺の優しい問いかけに頷いて、安堵したように呟く。
「君が……僕でイけてよかったよ」
「っ……」
何なんだ、コイツは。
基本素直じゃないくせに、不意討ちの可愛さが尋常じゃない。

「あ、深い意味はないから。せっかくするなら……二人とも達しないと……つまんないでしょ?」

あくまで割り切った関係を主張する士郎だが、何度もイッた身体や、注がれたままで抱き合っていたいなんて気持ちは―――実質は恋人以上のディープなものとしか思えない。

「そうだな。で?……つまらなくなかったから、次もあると思っていいのか?」
「それは……っ」

士郎はまた赤くなって、気まずそうに身をすくめている。

「好きな相手とまた会うのは、俺にとって自然なんだが……お前には抵抗があるようだな」

「……僕……は」
呑み込もうとした言葉を、溢そうか迷う士郎。

頬を寄せている彼の胸の鼓動が……気持ちの緩和材になってくれていて、今なら話せる気もする。

「恋なんて………どうやってしたらいいのかわからないもの」

「どうしてそう思うんだ?」
現にもうしてるんじゃないのか? と突っ込みたい気持ちを押さえて豪炎寺は頷く。

「……中学の時、ちょっと苦い思いをしてさ。サッカー部に強化委員として東京から来た仲間が加わって……」

士郎と同級生の彼だった。アツヤがなついて、当時キャプテンだった士郎も二人を見守り手厚くサポートした。
色々あったが楽しくやっていて……だがある日、一本気な彼から告白を受けた。
『もう友人としては見れない。俺のものになってくれ』と。

「ショックだった。友達じゃダメだって否定された気がしたんだ。断ったら相手は傷ついた顔をしたし、僕も答えられないのが悪いことみたいな気になって……」

「今もそう思うのか?自分が悪かったと……」
「ううん、仕方ないとは思うよ。でも断ったとき責められたんだ。期待させといて酷い奴って……それがずっと心に刺さってる」

「……お人好しだな」
「ほっといてよ」

思い詰めた彼に押し倒されそうになって、突き飛ばして逃げた。
翌日の部活で気まずそうな二人を不審に思ったアツヤにもバレて、仲間関係自体が白けてしまった。
そこまでは話さなかったけど、キャプテンとしてとても悔しい思いをした辛い過去だ。

「それから今までも……人間関係で何度かそういうのでギクシャクすることがあるから……なんかさ、僕自身にも問題があるのかな、と思うようになって」

「お前は悪くない。優しいから八つ当たりされたんだろう」
「八つ当たり?」

「ああ、言われたことは全部フラれた腹いせだろう。よくある捨て台詞だ」
「君も……言われる?」
「いや。男からは無い」

「クスクス、君が思わせ振りとか言われるなんて……想像できない」
「笑うな」

腕のなかで笑いをこらえる士郎にキスをする豪炎寺。
話して気持ちが軽くなったのか、士郎は笑みを浮かべたまま目を閉じて……やがて寝息をたてはじめる。




あ……れ?


瞼に届く微かな光に士郎が目を開くと、温かい豪炎寺の腕のなかで優しい眼差しを向けられていて……

「っ……おはよ」
赤くなるのを見られたくなくて背を向けると、ベッドサイドの時計が目に入る。
「え……もう朝?……って……あの………」
士郎は真っ赤になって小さな声を押し出した。
「なんか……当たってるけど……」

士郎は振り返り、ベッドのなかに潜りこもうとする。

「おい、何するんだ」
「ごめん、昨日……足りなかったんでしょ?」
「そこまで世話を焼かなくていい」
下半身の昂りに伸びてくる士郎の手を、豪炎寺が掴む。
出勤前だというのに、かいがいしくされるのは嬉しいが、気持ちだけで十分だと思う。

「今日はもういいから、それよりまた会って欲しい」

「…………」
口づけから身をかわして、何も答えず背を向ける士郎。

「変な勘違いしないで。セックスしたくらいで、僕が君のものになった訳じゃないから………」

言葉と気持ちと行動が……とんでもなくちぐはぐだ。
冷たい言葉を返しながらも、抱きしめられてる背中のぬくもりに胸が締めつけられている。

「わかった。じゃあお前の気が向くまで待とう」

彼はいつも余裕だ。
臆病もわがままも何でも受け止めてもらえる……士郎はその心地よさに、もう少しだけ甘えていたい気がしていた。



 
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