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love affair3

余計なことを考えるのは止そう。
士郎を受けとめてやれればそれでいい―――
冷たいシャワーに当たりながら、豪炎寺は自分に言い聞かせる。

嫌だと言うわりに、あんなに声を震わせ目を潤ませて……言葉とはうらはらな表情や、涙まで見せられたら……引くわけにいかないじゃないか。

士郎は「ここは何もない町」とよく繰り返すが、豪炎寺にとってはまったく逆の思いだ。
ここは士郎の生まれ育った町。あんなふうに身も心も新雪みたいに真っ白なヤツは、ほかのどこを探したって見つからないと思う。

ようやく漕ぎ着けた二人きりの夜。
体が纏う今日一日分のしがらみを洗い流しても、気持ちの燻りが消えることはない。



「帰らずにいてくれたのか」

「……まあね。こうみえて、僕……お人好しだから」
ベッドに腰かけていた士郎は、バスルームから出てきた豪炎寺をちらりと見てから顔をそらす。
「誰も知らないけどね。見抜いてるのはアツヤと君くらいのものさ」

「おい、アツヤと並列はないだろう」
見抜くというなら、アイツは違う。生まれた時から士郎と一緒で、性格なんてもとから知ってるんだから。
どうしたって俺に対して素直な口をきく気は無いようだ―――豪炎寺はため息をつく。

それに士郎が人が好いのはわかるが、ここに連れ込まれたのはお人好しだからじゃないだろう。
百歩譲って同情が混じってたとしても、それなりの“覚悟”があるからじゃないのか――?

「さ、僕もシャワー浴びてこよっかな」

隣に腰をおろすと、かわりに士郎が飛び退くように立ち上がる。

「ああ、ゆっくりしてくるといい」
言い終わらないうちにバスルームのドアが閉まった。


ピカピカのタイル張りの洗い場に、足を伸ばせる大きな置き型のバスタブ。
ふわりと漂うコスメっぽいボディーソープの香りの非日常感に、士郎の気分はすこし浮上する。

お湯を張りながらシャワーで髪を洗って……流れていく泡を肌全体で感じながら、この身体のどこに彼が興味をもつのか不思議に思う。

湯船につかると気持ちよくて、思わずため息が出た。
リッチな気分に浸りながら……こんなところ結構なグレードだろうに彼も思い切ったものだと考える。
本当に僕のために―――?

ああ、でも彼はこういうことをし慣れてるのかも知れないな。
気に入った異性を誘って口説き落としては、数々の甘い夜を楽しんできたのかも。

でも、豪炎寺くんとなら……そういうのもいいのかもしれない。
一夜だけ……もしくは彼が白恋にいる時だけとか……ロマンチックな恋の真似事に身を預けてみたりするのもあり……かも?
「……!」
僕ったら……なに考えてんだろ。
我に帰った士郎は、脳裏にたちこめる不埒な考えを追い払うように、鼻先まで湯舟に沈めて気泡の息を吐く。


「……何か飲むか?」

士郎が出てくるのを見計らうかのように、ミニバーを開けて豪炎寺が訊いた。

「炭酸水ある?」

「ああ……何か割るのか?」

「ううん、ストレート。そのままちょうだい」

ペットボトルのまま受け取って喉を潤す士郎に無言で近づいた豪炎寺が、残りを飲み干す。

テーブルに転がる空のボトル。
あ、間接キス………とよぎった士郎の幼い発想は、豪炎寺の唇に唇を塞がれまたたくまに掻き消される。
「ん……!っ……ぁふ……」
冷えた互いの口内に残る炭酸の泡の清涼感も一気にキスの熱に呑まれてく―――

「ちょっ……僕と……こんなことした……って……」
「お前とだからしたいんだ」
「んん……っ……」
口内に舌を押し込まれてくぐもる声。
初めてのキスが……こんな急に上級者コースをかけ上がってしまうなんて。

もがく手首を緩やかに掴まれて、どうして身体が熱くなるのかわからないまま、縺れるようにベッドに倒れてく……

「……やっ……何して……っ……僕、男だよっ」
「そうだな。反応を見ればわかる」
「ひぁ……!」

下着ごと脱がされたズボンの下で濡れて勃ちあがるのはたしかに自分の性の象徴だ。

「や……っ……ああっ……」

あいだに顔を埋める豪炎寺のせいで、閉じようにも閉じられない両脚。

「どうだ?」

「っ……どう……って……」

「お前が嫌なら……やめるぞ……」
「……は……ぁあ……そこ息……かけないでっ……」

イヤとかイイとか考える余裕すらない。張りつめた性器を舌でなぞられると全身が溶けてしまいそうだった。

「………け……して……」

「……?」

「で……んき……」

「……わかった」
口唇で愛撫を続けながら、豪炎寺がサイドパネルのスイッチに手探りで触れて、明かりが落ちる。
強引にのめり込んでくるわりに―――優しさも常に感じさせてくれる。

「あ……ぁっ……」
解された後ろから滑り込む指が、淫らな音をたてて内側を擦りはじめて……必死で声を押さえても、身体がびくびくと痙攣を伝えてしまう。

「もぅ……やめ……」

嫌がるなら本当にやめるつもりなのだろう。
ぴたりと止まった豪炎寺の手を、士郎はしがみつくように引き寄せる。
「だ……め……やめちゃ……」

なんで止まってほしくないんだろう。

熱くて……
震えて……浮かされて……
これがカンジるということなんだろうか。

自分でも触れたことないところに、触れられて。
自分のからだのなかに、自分じゃないものの侵入を許したまま高揚していくなんて。

「―――挿れるぞ」

“いやだ” とか “やめて”とか零さないように、士郎は手の甲で口元を隠しながらそっと腰を浮かした。

 
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