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おまけ〜side.G

エイリア学園にまつわるすべての出来事が決着し、キャラバンのメンバーは雷門中で解散した。

そのあと鉄塔広場でしばらく語り合っていた三人のうち……円堂が帰り、俺と吹雪だけが残った。

吹雪は俺が沖縄で潜伏していた時に出会い、恋に落ちた相手だ。
間もなく深い仲にもなった。
しかし俺がチームに復帰してからは、仲間同士の寝泊まりがキャラバンの車内だったこともあり、吹雪とのスキンシップは皆無に近かった。
……たまに寝袋のまま顔を寄せあい、メンバーの目を盗んで秒速のキスをするくらいのものだ。

だが人目がなくなったからといって、急に態度を変えるのも不自然な気がして。他人行儀な距離を保ったまま、夕焼けにそまる町を見下ろしている―――


「いつの飛行機で発つんだ?」

「……今日の8時の最終便かな。まだチケットは取ってないけど、今から向かえば十分間に合うよ」
景色に視線を注いだまま吹雪は受け答える。
淋しさが堰を切らないように堪えてるようにも見えるのは、俺の思い上がりだろうか。

「吹雪」
「……何?」

「今日は俺の家に泊まらないか?」
「え……っ」
吹雪は目を丸くして固まり、慌てて首を横に振る。
「いいよ。そんな……急にお邪魔したら君のご家族に悪いし」

「そんなのは構わない。お前が嫌なら別だが……」
「いやじゃないけど……ん…っ……」
眉をひそめ躊躇い顔の吹雪の顎に指をかけ、引き寄せて唇を奪う。
さっきからオレンジの陽光に照らされた唇が果実のようにみずみずしくて……すごく気になっていたんだ。

「俺は……少しでも長くお前といたい」
唇をずらして囁くと、吹雪はハッと目を開いてから、恥ずかしげに睫毛を伏せる。
「それ……は……僕もだけど……学校に『今日帰る』って電話しちゃったし……」

気持ちがこっちに向いてるのがわかるのに、それとはうらはらに煮え切らない態度。
その奥の吹雪の本心が読めない。

物別れのまま歩き始める二人。

キスをしても、なかなか踏み込めない距離がもどかしい。

俺たちが出会って急激に深まったのは、二人があの時それぞれに極限状態で、本能的な欲求が、相手を大切にしたい気持ちを追い抜いていたからだったのか。
今は、お互いに照れや気遣いが先に立つ―――


「あ……そうだ」

等身より長くなったふたつの影が階段に差し掛かり、先に一段降りた吹雪が立ち止まる。

「……どうした?」

段差が加わりいつも以上の身長差になった吹雪が、うつむいてぼそっと訊いてきた。

「あのさ、唐突だけど……君、お医者さんに誰か知りあいいない?」

「……」
ビンゴすぎて、俺は逆にどう答えたらいいのかわからなかった。



それから数十分後―――。

俺は吹雪を自宅の部屋につれて来ていた。
俺の知る『医者』を紹介するためだ。
父の帰りは夜になるから、必然的に家にも泊めることになるだろう……俺にとっては願ってもない状況だ。


「驚いたなあ、君のお父さんがお医者さんだなんて……」

「父は外科医だが……何の相談なんだ?」

「え……っと……それは……」
相談内容が訳ありなのだろう。俺の部屋のベッドに腰掛けた身体をもぞもぞさせながら、吹雪は困ったように首をかしげる。
「なんか……君の……お父さんだと言いにくいなぁ……」

「……どういう意味だ?」
勉強机の椅子で脚を組み、怪訝な顔をしている俺を見て、吹雪がしおらしくうなだれた。

「あの実験が……成功しちゃってるかもしれないんだ」

「実験? 成功って何だ?」

「エイリアの実験さ。人工のは失敗だったけど、あの時君とえっちしたら、オーラがうまく結合したかもしれなくて……それで……」
吹雪は顔を赤くして、途切れ途切れに言葉を押しだした。
「新たな別の個体が……僕の中に存在して……る…かも……しれない……ってこと……」

俺が驚いた顔をして固まっていたからだろうか。
吹雪は消えていくように黙り、顔をそむけてしまった。

「こんなこと……ほんとは君に言いたくなかったんだ」

北海道に帰ってから一人で医者を探そうかとも……と言いかけた吹雪に近づき両肩に手を置く。

「お前なあ、俺に言わずに誰に言うつもりなんだ?」

「だって僕……男なのにおかしいでしょ?それに……君を巻き添えにするのも申し訳ないし」
「巻き添え? 今の話が本当なら、俺は当事者だろう?」

「でも僕、男だよ?」
「……それが何か関係あるのか?」

「今、君言葉を失って凍りついてたじゃないか?」
「違う。驚いただけだ」
俺は込み上げる気持ちにまかせて吹雪を抱きしめ、潰さないようにふわりとベッドに重なって倒れる。

「とにかくちゃんと父さんに話そう。お前がどう異変を感じるのか、包み隠さずに」
「でも……いろいろ聞かれちゃうんだよ?何でこうなったのかも全部……」

「そんなこと気にしてる場合じゃないだろう?お前の身体のことを第一に……」
大真面目に諭しながら、俺はふと言葉を途切らせた。

吹雪が目を真ん丸にして、呆れたようにこっちを見ていたからだ。

「君ったら……僕にボールを撃ち込んどいて、どのロが言うのさ?」

俺は内心ぎくりとして、吹雪の腹に視線を吸い寄せられる。

「すまない。……あんなことはもうしない」
「ひゃっ……」
シャツをめくって腹部を確かめると、傷痕一つなく雪のように白くて………

その下腹をいたわるようなキスで撫でながら、もしもここに……俺たちの結合の証が存在するのだとしたら……半信半疑だが、嬉しさがこみ上げてきた。




おまけ*完


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