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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

実験の成果(F)3

僕らが灯台から別の場所へ移るのは、日没後と決まった。

警察からの呼び掛けを待つ間も、僕を真摯に求め欲望をぶつけてくる豪炎寺くんに、何度応えただろう。僕も包みかくさず彼に身体を開いて、感じるままに乱れながら……。

ここに来たときはまだ朝だったのに、落ち着いた頃にはもう夕方近かった。

シャワー室に連れていかれて、身体のナカまでぜんぶ洗ってもらって……

「お前、見た目……すごく幼いよな」

狭い脱衣場で放心しながら身体を拭いている僕を見て、彼がぽつりと呟く。

「そ……んなことないよっ、撫で肩だからそう見えるけど、脚とかはしっかり鍛えて……ほらっ」

僕はむきになって身体を捩り、腿やふくらはぎの締まり具合を見せると、豪炎寺くんは慌てて目をそらす。
「っ……天然で誘うのは止せ」
「……??」
どうやら僕のポーズは脚というよりも、洗いたてのお尻をつきだしてるように見えたみたいだ。


もういつでも出かけられるように服を着た二人は、シーツを替えたばかりの布団の上に座る。

「食べるか?」

「……ありがと」

豪炎寺くんに背中から凭れるように抱かれて座る僕は、分けてもらった非常食を口にいれるけど、お昼を抜いている割に空腹感はそれほどじゃない。

「労ってやれなくてすまなかったな」

「……ううん、大丈夫だよ。こう見えて体力あるほうだから……」
さっき“幼い”と言われた時と同じ……少し罪悪感みたいなニュアンスを彼から感じとった僕は首を横に振る。
「ていうか僕もしたかったんだし……」

「お前……すごくカンじやすいよな」
「なにそれ。ほかの人なんて知らないはずだよね?」

拗ねた目で見上げると「それもそうだな」と微笑み返された。

たしかに僕は……豪炎寺くんが片手で収まる回数イくまでに、たぶん両足まで使わなきゃ足りないほどイった。
ゲージを振り切った時一気に出せばいい彼とは違い、僕は……中からも外からもどんどんくる快感に襲われて忙しいんだから仕方ない気もするんだけど……。

何だか僕のこと気かける豪炎寺くんの態度が、僕を子供扱いしているように見えてならない。


「吹雪……ありがとな……」

膨れながら乾パンをかじっている僕の背中から、豪炎寺くんの腕が全身を包みこんだ。

「お前の……あのペンダントの石が、俺への脅迫の対策にも役立ったらしい。俺も……近いうちキャラバンに戻れると思う」

熱のこもった声が僕の胸を揺さぶった。

「そう…なんだ……よかった」

彼を慕うキャラバンの皆の顔が頭をよぎる。彼が戻れば、キャラバンが断然活気づくことは容易に想像できた。
そして僕も……彼とやれればまた……新境地が開ける気がする。

「お前のおかげだ」
「そんな、僕はただ……」

回された腕にぎゅうっと力がこめられる。
「お前を抱いて……俺は満たされるということを知った」

「……っ」

ドキンと鼓動が高鳴った。
この上ない言葉をもらった気がして……同時に彼の今までの孤独や渇望を垣間見た気もして。

「僕だって……君には感謝してるよ」
子供扱いなんてされてなかった。
むしろ彼は……僕のこと頼りにしてくれている。そんな嬉しさがじわじわ胸に広がって……僕からも素直な気持ちが零れだす。

「君に抱かれたらね……実験でいじられた脳波とか身体とか全部飛んじゃって、元どおりに戻ったみたいなんだ」

「……それは……よかった」

「??」

ふと腕が緩み、きょとんとした僕は豪炎寺くんに振り返る。

「でもお前……自然体に戻ってもまだ俺に発情できるのか?」

「ふふ……心配? なら今確かめてみる?」

「……いや、心配というより、ただ……」
いたずらっぽく笑う僕の身体を向かい合わせにして、豪炎寺くんは再び強く抱きしめる。
そして唇を耳元に寄せて、熱い吐息とともに囁いた。
「これからも一緒にいてほしいんだ……もちろん“こういう関係”のまま……」
「……」
声がでない。
僕は込み上げる思いで胸をいっぱいにしながら、ただ何度も頷いて返した。



あとで思えば、彼は刑事さんから聞いて知っていたのかもしれない。
このあと二人が一旦離ればなれになること―――だからその前に改めてあんな告白をしたんだろう。

夕日が沈むとまもなくして豪炎寺くんの携帯が鳴った。
階段を降り外へ出ると、扉の前で待っていた二組の警官が二人ずつで僕らをそれぞれ保護し、ボートとパトカーに分かれて別々の場所へと移動した。

そして僕は病院で身体検査を受け異常がないかを確認し、キャラバンに戻って瞳子監督に引き渡された。
これで、奇妙な一ヶ月間の拉致生活に終止符が打たれたわけだ。

長いようで、終われば短いような気もするけれど、僕は確実に変わった。
変えたのはもちろん“実験”じゃなく、豪炎寺くんとの出会いだ。



「お前さあ、炎のストライカーを探しにいくって、相手の顔も土地のこと知らね〜のにそりゃ無謀だっただろ」

「そうかな……」

「そりゃそうさ、これからは一人でふらふらすんなよ。どっか行きたきゃ、沖縄を知り尽くすこの綱海様に頼ってくれよな!」

綱海くんは胸を張って拳でドンと叩く。

「ありがとう。でも炎のストライカーには会えたんだよ」

「えっ!? そりゃ本当か? えっ、えっ、どんなヤツ?写メ撮った?友達になったのか?」

「……友達……まあ、そうだね」

僕の胸は彼とのことを思い起こして、きゅんきゅんと発熱している。

「おっ、綱海ぃ。豪炎寺の写真観たいんなら俺持ってるぜ?」

楽しげに携帯を覗き込む二人を、僕は遠目に見守る。
サッカーをプレイしてる場面を見てるのか「すげー!燃えてるじゃねーか!!」なんて綱海くんが騒いでる。

円堂くんの豪炎寺くん自慢は、僕も何度か聞いたことがある。

でも今の僕は……ある意味円堂くんを飛び越えて、心身の奥深い場所で豪炎寺くんを想って疼いてる。


近いうち帰ってくる君に、どんな顔して、どんな声をかけたらいいんだろう。

僕はきっと幸せで顔が輝いてしまうから、皆に怪しまれないように言い訳を考えておかなくちゃ……なんて考えながら、もう頬が緩んでしまうんだ。




JIKKEN*完


 

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