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舞い降りた雪(G)3

R18

「ふふ、おいしかったね」

「ああ」

二人で摂る食事は美味しかった。
心まで満たされる食事なんていつ以来なのか遠すぎてわからない。
笑いあいながらも、吹雪は俺のシャツの裾を小さく引いて、さっそく布団に入ろうとしている。

「なぁ、吹雪」

「……なぁに?」

「お前……俺が好きか?」

「…………!」

「俺は、お前が好きだ」

告白に動揺して赤くなる吹雪を抱き寄せる。
謎の多い奴だが色白のせいで顔色の変化だけは至極わかりやすい。

「お前が……俺に言い寄る目的は何なんだ?」

「…………」

コイツは俺の前に現れた時、明らかに発情していた。
初めて会った相手にあんな状態なのは尋常じゃない。
吹雪は多かれ少なかれ何かに操られてここに来た、その理由を知りたったのだ。

「僕……実験台に……なってたんだ。脳波を刺激して興奮させられた体の中に、君のオーラを毎日取り込む実験さ」

「……そうか」
俺は固い表情で頷く。
吹雪が心をともなわない……生物として発情させられていたという“現実”を突きつけられた落胆もあったし、吹雪の身の上も心配になる。

「あ、でも今は違うよ。実験は中止された。それでも僕は君のオーラが恋しくて……それで君を探してここへ来たんだ」

「お前自身の意志でか?」

「うん……そうだよ。僕、君のこと……会う前から好きになっちゃってたみたいなんだ。それに実験のときも世界中いろんな人の波調を試してみたけど反応しなくって……ほんとに君だけ……」
「わかった。それで十分だ」
俺は吹雪を抱きしめ布団に押し倒した。
被さった身体の下で、見上げてくる吹雪がとてつもなく可愛い。
心配や不安もあるが、単純なもので“君だけ”が“好き”と言われた嬉しさが勝る。

「じゃあ俺たちは……両思い、ってことだな」
「うん。両思い……だね」
うっとりと身を寄せてくる吹雪と抱き合い、とろけるようなキスをした。
突然降ってきた宝物を今、しっかりと受け止めた……そんな気分だった。


「あの……さ。ひとつお願い聞いてもらっていいかな?」
「ああ、何だ?」

「君の精液……飲みたいな」
「っ……!」

吹雪を腕枕して安らかな幸せに浸っていた俺は、ギョッとして半身を起こす。

「前やってた実験で、君仕様の人工のやつを飲んでたら……病みつきになっちゃって……」

「人工?お前、そんなもの何のために……」
「それは言えない。でも大丈夫だよ、何も起こらなかったから。それに……」
吹雪は言葉を続けようとして呑み込んだ。
俺が深刻な顔をしていたからだと思う。

「あの……ごめん。気を悪くしたかな?」

「いや。お前と俺の間でなら、何をしようと構わない」
吹雪をしがらみから解き放ちたい一心で、俺は確かめるように訊く。
「今、石は身につけてないな?」

ぶかぶかのTシャツ一枚の吹雪は、こくりと頷いた。

「マフラーも外してくれ」

「っ……」
吹雪が戸惑い俺を見る。
無理難題なのは承知だ。だが譲るつもりはなかった。
「この行為は俺とお前だけのものだろう?他からの介入はさせない」

吹雪は観念したように黙ってマフラーをほどいて枕元に置き、そのまま俺の方に膝でにじりよる。

「取ったよ。どうすれば……いい?」

「やり方はお前も知ってるだろう?」

俺は吹雪の腰を引き寄せてTシャツを捲り、吹雪の性器を手の内に包んだ。
「……っ!」
吹雪も顔を赤くしながら、負けじと両手で俺のズボンのウエストの前を持って思い切り引き下げる。

迸る欲望の隆起に一瞬ひるむが、ためらいがちに白い手が先端に触れる。

「……吹雪。こうしよう」
「あ……っ、やだよ……っ」
布団に寝そべり吹雪を逆さにして互いの性器を愛撫できる姿勢を取ろうとすると、恥ずかしがって激しく身を捩らす。
「俺も吹雪を気持ちよくさせたい」
「やだってば、はずかしい!」
「誰も見てない。俺だけだ」
「そう…だけど…っ……ひぁ……」

半ば無理やり吹雪の脚の間に顔を入れ、後ろの口を唇で塞ぐと、力が抜けて大人しくなった。
「……ん………クチュ……」
俺の性器にも吹雪の温かい舌が触れ、唇に包まれる。そのまま狭い口内に招き入れられて、腰椎が渇望の熱で熔けそうになる。
「くっ……」
つたない舌と手に擦られる動きに誘われて、せりあがる欲望を俺は吹雪の喉奥に放った。

「……んむ……っケホッ………コホッ………」

「大丈夫か?」

「だ……いじょぶ……濃く…て……たくさん……で、びっくりしただけ」

溢れたぶんも丁寧に舐めとりながら浮かべる笑みは清らかで、かえってそれが淫靡にも映る。

「おいし♪ ね、もっと……ほしい」
白い指の間や、俺のところに残るものまで舐めたあと、吹雪が甘えるようにせがんだ。

俺たちはまたシックスナインの体勢になって、お互いを味わった。
相手の反応だけを頼りにただやみくもに、満足のいくまで―――。

吹雪は二度目のも美味しそうに吸いとり、念入りに……一滴のこらず隅々まで舐め取っている。

「俺のが欲しければいつでもやるから、人工のなんてもう忘れろ」

「うん、そうするよ」
吹雪は濡れた唇を指先で拭いながら、夢見心地で呟いた。
「僕……騙されてたかも」と。


気づけば夜も更けていた。
布団のなか二人で並んで天井を眺めながら、眠る寸前ぽつりと会話をかわす。

「今日限りなんて言うなよ」
「もちろんさ」

「愛してるから」
「ふふ……おませな言葉」

通いあう心の充足が深い眠りをつれてくる。



翌朝、吹雪は消えていた。
眠るとき繋ぎあっていた手をほどいて。
洗濯して乾いたユニフォームとマフラーとともに。

テーブルの上にわざわざ残された紫の石を見つけた俺は、吹雪とまだ心が繋がっていることを確信する。

俺はそれを極秘の拾遺物として鬼瓦刑事に渡した。
事件全体の捜査に関わる重要な鍵になることは間違いないだろう。

そのとき刑事から、はじめて吹雪士郎のことを聞いた。
一ヶ月前キャラバンが沖縄に着いた日から行方不明になっている少年がいるという。
“炎のストライカー”を探しに出掛けていなくなったのだと……。


 

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