たまには停戦


「休みですか?やった」

次の日曜日にようやく休みが取れた。
最近働きづめだもんね。普通の獄卒のときはちゃんと休みがあったけど、やっぱり地獄の中枢となれば仕事量が違う。
久々の休みにやりたいことはたくさんだ。

「ちなみに私も休みです」
「そうなんですか?」

鬼灯さんはもっと久しぶりだろうな。閻魔大王も気を遣ったのかも。
よかったですね、なんて早々に休日の計画を練る。まずはお昼まで寝て、ショッピングに美味しいもの…。
にやにやとしていたのか鬼灯さんに頬を引っ張られた。痛いよ!

「楽しそうなのはいいですが、あなたの予定はもう決まってますよ」

え、それはまさか…休日と言う名の視察?出張?外交という可能性も…。
それがあった。休日と称したただの仕事。一日中地獄を見て回ったり現世に行ったり…。確かにいつもの仕事とは違うけど、それは休日じゃない。
それならそうと言ってくれなきゃ私のこれはぬか喜びだ。期待して損した…。

「先に言ってくださいよ。そういうことは」
「すみません。なにせ急に休日が入れられたので。二人揃っては難しいですからね」
「視察なら一人でも…」
「視察?私とデートですよ」

……デート!?デートって男女がきゃっきゃ言いながらラブラブするあれですか?
思ってもみなかった言葉に目を丸くしていれば、鬼灯さんは首を傾げた。

「嫌ですか? 」
「なんで休日まで上司と一緒にいなきゃいけないんだよ…」

毎日嫌というほど顔を合わせているのに、貴重な休みの日まで…。文句を言う私の顔を見て鬼灯さんは黙ってしまった。
あれ、今日は大人しいね。いつもなら嫌だと言っても強引に話を進めるのに。
鬼灯さんが黙ってしまえば私も話すことがなくて黙ってしまう。
デートだなんて鬼灯さんも急に何を…。そう思っていれば重要なことに気がついた。

デートって恋人同士のイベントじゃないですか。私たちはまだそれらしいことを一度もしてない。まさか鬼灯さん、普通に私とデートがしたくて誘った…?
休日を一緒にするなんて調整が大変なことをして、私はさっきなんて言っただろう。
恐る恐る鬼灯さんの顔を覗き込んでみれば、鬼灯さんも意外だったのか言葉を失っているようだった。

「名前が嫌なら無理にとは。毎日嫌というほど会っていますもんね」
「あ、いや…」

なんでこういうときに限って積極的じゃないんだ。なんでそんなに残念そうなんだ!
私は本当にかわいくない彼女だ。仕事とプライベートは違うだろうに。

「鬼灯さん」
「久々の休日、楽しんでくださいね」
「ま、待って」

身を翻す鬼灯さんの手を掴む。鬼灯さんはゆっくりと振り返った。

「デート…いいですよ」
「さっき嫌だって言ったじゃないですか」
「それは…」
「嫌々行くならいいです」

ああ待って。拗ねてる。鬼灯さんが拗ねてる!なんだか面白いし、からかいたいけどやめておこう。
鬼灯さんとデートするのは別に…い、嫌じゃないし…。鬼灯さんが頑張って作ってくれた休日だし…。

「鬼灯さんとデートしたいです」

ぎゅ、とさらに手を握れば、鬼灯さんは数秒私を見つめたあといつも通りに戻った。…戻った?

「名前がそんなにデートしたいなら行きましょう。まさか名前から誘ってくれるとは」
「え、ちがっ」
「たまには二人だけでのんびりしましょう」

優しく包み込まれて言いたいことも言えない。
まさかだけど…そうだったら嫌だけど…鬼灯さんわざと?どこから?あの拗ねてたのとかがそう?
なんだかまた鬼灯さんの思い通りのようで気に食わない。
そしてそれを色んな人に言いふらされました。私は完全に嵌められたようです。

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