目隠しと油断


「だいたいどこまで行ってるんですか。すぐに見つかるだろうと思ったら見当たらないし…あなたの部屋は逆方向でしょう?」
「すみません…」
「それにあんなすけこましに絡まれて、何かあったらどうするんです?」
「申し訳ありませんでした」

戻ってからぐちぐちと説教を聞かされて一時間。そろそろ疲れてきた。
いや、私が悪いかもしれないけどさ、そもそもの原因は鬼灯さんだから!
勝手にうろちょろしない!とまたお母さん節をきかせてくるし、めんどくさい…。
適当に謝ってたら金棒飛んでくるから怖い。

白澤さんから貰った薬がだんだん効いてきてそろそろ目も回復する頃だ。
もう絶対芥子味噌なんか作らない。目潰しだけは危険だ。視覚が奪われたら死活問題。
ようやく説教も終わって鬼灯さんもため息を吐いている。私が吐きたいよ!

「で、どうですか?目の方は」
「そろそろたぶん」

目に巻いていた包帯を外しながら目を開けてみる。今度は痛くもないし視界がはっきりしている。
久々の光に目を慣らしながら目の前の鬼灯さんを見る。なんだか懐かしい感じがする。いつもの無表情なのにどこか新鮮だ。
やっと回復した!とようやく心の底から安堵できる。
鬼灯さんはそんな私の両手を握った。

「なんですか?離してください」
「今日はもう仕事は終わりましたので」
「はい?じゃあもう帰ります。お疲れ様でした」

じっと見つめて今度は一体なんだ。もうそういうのやめてほしい。鬼灯さんのその視線はやっぱり苦手だ…。

「このあとの時間、いくらでも私を見ていていいですよ」
「は?なんで鬼灯さんの顔なんか見なくちゃいけないんですか」
「名前言ったでしょう?私の顔が見れなくなるのは嫌だ、って」

え、そんなこと…言ってた。あれはその場しのぎの言葉なんだけど。
鬼灯さんもわかってて言ってるよ。そういうのわざわざいいから!
見つめられると簡単に逸らせなくて困る。ああもう、心臓に悪い!

結局終日まで視線が気になって、こんなに鬼灯さんを見ていたのは初めてな気がする。
もう冗談でも変なことは言わない。




「ところで鬼灯さん」
「はい?」
「その金棒どうしたんですか?なんか血がついてるような…」

机に立てかけてある金棒は亡者でも殴ってきたのか少しだけ血がついている。
気になるのはそれだけじゃなくて、鬼灯さんのなんとも言い難い怖い顔。
どこかで人を殺してきたんじゃないかって顔して金棒を担いでさっき戻ってきた。
なんとなく聞いてみたら鬼灯さんは声を低くする。

「別に名前を襲った獄卒を半殺しにしてきたわけじゃないですよ」
「うわ…バレてる…」

どこで知ったんだろう。実はあのときすぐに気がついてたとか。
さすが鬼灯さん…と苦笑していればまた説教が待ってるんだろうな。
今日は厄日だ。

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