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【吉岡×菱沼 お馬鹿なにゃんこシリーズ】

中庭がよく見下ろせる空き教室の一室で陸斗は、とある人物を待ちながら餌付けされている自分の恋人を観察していた。

「いいんちょ、いいんちょ!俺ね、スルメ欲しい」

「ふふ、そんなに慌てなくても大丈夫。スルメは逃げはしないからね。ほら、口を開けて」

「あーん」

陸斗の溺愛する可愛いにゃんこ…高雅はよりにもよって"あの"菱沼風紀委員長に懐いてしまっていた。
高雅にスルメを食べさせてやっている菱沼の笑顔の何と甘い事か。ふにゃふにゃとスルメを貪る高雅の何と可愛らしく…憎らしい事か。
ミシッと嫌な音がして陸斗が掴んでいた窓枠が手の形に歪んだ。
偶然その光景を目撃してしまった陸斗の待ち人、生徒会長吉岡充は触りたくないと思いつつ、仕方なく声を掛けた。

「は…白馬…?悪い、ま待たせたか?」
「…生徒会長、いえこちらこそ突然お呼びしてすみません。どうぞこちらへ」

(目が笑ってねぇ…!)

いつものような貴公子スマイルを浮かべているが、目は全く笑っておらず凄みがある。吉岡は逆らうのは得策ではないと判断して、大人しく窓際の彼の横に立った。
恐ろしい形相で陸斗が見つめる先を生徒会長も何気無く見ると、そこには高雅と…優しい笑みの菱沼風紀委員長。
吉岡は高雅の方ではなく風紀委員長の方だけを食い入るように見つめている、その姿を見た陸斗は今から行う計画が滞りなく進みそうだとほくそ笑んだ。

「可愛いでしょう、私の可愛いにゃんこは。…それによくよく見ればもう一匹にゃんこがいるようですし」
「…それは菱沼の事を言ってんのか?」
「ええ、高雅が三毛猫なら委員長はシャム猫でしょう、気高く女王様気質な所などそっくりではないですか」

陸斗の目には高雅の頭に猫耳が見えていたが、吉岡の目にも菱沼の頭の上にチョコレート色の愛らしい猫耳が見えた。
というのも吉岡も菱沼が猫のようだと最近ずっと思っていたからだ。

文化祭が近くなり自然と生徒会と風紀の交流は多くなる、その際以前から近寄りにくかった菱沼が自分と同じように高雅達の性交に心酔している事を偶然にも知ってしまった。
それから二人の距離は一気に縮まり、性格の相性も良かったのか今では互いの部屋を行き来して談笑する程には親しくなっている。
勿論陸斗がその情報を知らない筈が無かった。

「ねえ生徒会長…、貴方も可愛い自分だけのにゃんこが欲しくは無いですか?」

堕落を誘う悪魔のように優しい声で陸斗は尋ねた、吉岡の肩がピクリと跳ね目を見開きながら陸斗を見つめた。
陸斗は吉岡の肩に手を置き妖しく微笑みながら、彼の耳に唇を寄せた。

「気高く気性の激しい猫が自分だけに懐き、全てを委ねてくるのです」

『充(みつる)…みつるぅ…』

「普段は凛々しく生徒達の憧れである彼が貴方の前では従順で淫らなにゃんこ。貴方は彼を愛で可愛がり自らの手で激しく乱れさせ、彼の心は…愛は全て貴方だけに向かってくる。…どうです、それは何て甘美で素晴らしい事でしょうか?」

『ひっ…、あぁっ…!充、…もっとして…!充…っ!』

陸斗の言葉によって吉岡の脳内の中に居る菱沼は次々とあられもない痴態を晒していく。
元から綺麗な顔をしている菱沼が快楽に表情を蕩けさせ、自分を見つめてくる。
ゾクリ、と背中に暗い愉悦が走った。

「菱沼が…俺のものに」
「ええ、そうです。貴方のものに…」

甘い声で誘導しながら吉岡の顔を覗き見た陸斗はほくそ笑む、熱に浮かされたように呟く吉岡は舌なめずりしながら口角を吊り上げていた。

「…菱沼のやつさ、普段はあんな感じで冷たくて美人でキツいってイメージだけど本当はどっか抜けてて、…寂しがり屋なやつなんだよね」
「へぇ、そうなんですか。初めて知りましたよ」
「性格も悪くないし、俺との性格の相性も良いし。…なぁ白馬、俺と菱沼が一緒に行動してたら、どう思う?」

吉岡の態度に陸斗は内心高笑いしながら、優しい声で止めを刺した。

「とてもとてもお似合いだと思いますよ、…実現の為に勿論協力させていただきましょう」

邪魔者の始末完了、達成感に満たされながら陸斗は吉岡に手を差し出した。
吉岡はその手を迷わず取り、二人は熱い握手を交わした。

「菱沼を俺のものに必ず…してみせる」
「頑張って下さい生徒会長」


その頃仲良くスルメを食べさせあっていたにゃんこ2匹は何故か悪寒に襲われ、周囲をキョロキョロと見回していた。



―――――――



あの密談から1ヶ月。

いつも餌付けされている中庭で高雅が菱沼を待っていると、何故か陸斗がスルメやタラなどのおつまみを大量に持ってやってきた。

「んにゃ?何で陸斗が居るんだ?」
「実は風紀委員長に恋人が出来まして、まだ付き合い始めたばかりらしく二人の時間を大切にしたいそうで。とても残念だと言っていましたが、私が彼の代わりにと頼まれまして」
「…そっか、いいんちょにも好きな人が出来たんだ。嬉しいけどちょっと寂しいかも…」

もし高雅に猫耳が生えていたなら、へにょりと残念そうに頭に伏せられていただろう。
少しだけ罪悪感を感じながら、陸斗は袋から取り出したスルメを高雅の口元に運ぶ。

「高雅、落ち込まないで下さい。これからは私が食べさせてあげますからね、はいあーん」
「うん、ありがと陸斗。あーん…むぐっ」

高雅の髪を撫でてやると気持ち良さそうに喉を鳴らして、手のひらに頭を擦り付けながらふにゃりとした笑顔で口を開けた。

そんな光景をあの部屋から見つめている二人が居た。

「…私は結局彼の手のひらの上で踊らされていただけだったようだな」
「まあそういう事になるな、俺もだけどね。でもまあこうして付き合う事になれたし、良いじゃんこれで」

菱沼の髪を撫でている吉岡と、吉岡にもたれ掛かり肩を抱かれている菱沼は高雅達を眺めていた。
あの密談の後吉岡は陸斗の協力を受けながら、友情から恋愛感情へと菱沼の意識を変化させ、とどめとばかりに陸斗直伝のテクニックで菱沼の体も陥落させた。

「あー、今度白馬達のセックスに混ぜてもらえないかな…。あいつらにお前を自慢したい」
「なっ、充…!?」

菱沼は顔を真っ赤にしながら照れ隠しで吉岡を叩いたが、内心満更でも無いようだ。

恋人に餌付けをされて幸せいっぱいのにゃんこと、念願の自分を満たしてくれる御主人を見つけたにゃんこ。2匹は今日も幸せそうに過ごしている。

end



恵様、ありがとうございます!この度は急がせてしまって申し訳ございませんでした(>_<)お忙しい中執筆してくださって感謝の気持ちでいっぱいです!
吉岡…、まんまと陸斗の計略に引っかかるなんて相も変わらずバ会長ですね(*^艸^*)陸斗の腹黒っぷりも、感服いたします(笑)でもでも、何より私がときめいたのは実は菱沼だったり…!何この子、かわいいにゃんこに変身しすぎでしょ!かわいいよひっしー、ハアハア(#^q^#)
企画にご参加いただきましてありがとうございました!これからもはるうららをどうぞよろしくお願いいたします!

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