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「可愛すぎるのも困りもの」

今日は朝から雨が降っていた。
どんよりとした雲から降ってくる雨はまだパラパラと強くはないが、今日の昼は屋上では食べられないだろう。

さて、どうするか。

そう考えながら、晴海はいつもチームがたまり場にしている教室へと入る。
其処には既に数人の仲間たちがいて、各々好きなようにくつろいでいた。

この空き教室は、他の教室の2倍程の広さがあり、机や椅子も無かった。
すぐに克也が気に入り、椅子やテーブル、ソファ、と段々物が増え、あっという間にチームのたまり場が出来上がっていた。

そこに入れば、次々と仲間たちが声をかけてくる。
それにいつも通りに返してから、晴海は自分の定位置であるソファへと座った。

克也はまだ来ていない。
授業はまだ始まらないし(出ることも少ないが)、と何もすることもなく、何気なく窓の外を見た。

その窓の外、其処に見覚えのあるシルエットを見つけて、意識をそちらに向ける。


「え、紫音ちゃん?なにして……」


まだ降り続く雨の中、紫音は腕に何かを抱えて走っている。
それをしっかり認識すると、すぐに立ち上がり、近くにあった傘を引ったくって出口に向かった。


「え!?いきなりどうしたんすか!?」

「副総長!?」

「それ、俺の傘……」


仲間が何か言ってるが、全て無視して扉を開け、紫音が向かっているだろう昇降口まで走った。



比較的昇降口から近かったのと、走ったおかげか、晴海が着いた時紫音はちょうど靴を履き替えたところだった。
着ているのはシャツ1枚で、上着は腕に抱えている何かを護るように被せられている。
言わずとも濡れている身体は、まだ小雨だった筈なのに、予想以上に濡れていた。

其処までをざっと確認した晴海は、一目散にに紫音の所に行き、その手を引いた。


「!?……ぇ、はる」

「紫音ちゃん何してんの!?こんなに濡れて……そのままじゃ風邪ひくよ!!?」

「ぇ、え??」


混乱する紫音になど晴海は気付かず、ぐいぐいと引っ張って、来た道を戻っていった。
後に残された、昇降口にいた生徒たちは、皆一様に呆気にとられて彼等を見ているしか出来ていなかった。


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