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2

襲いくるであろう衝撃に耐える
ため、ぎゅうっと目を閉じる。

ガッッ!!!

衝撃音がした。が、痛みは一向にやってこない。どうしたのかと思いそろりと目を開ける。

目の前にいたのは吉田ではなく、
一夜だった。


「………和也に手をあげようとしたな…?お前が和也を殴る前に俺が駆け付けて良かったな?
もし、俺が来る前に、和也が殴られでもしてたら……
首を、絞めたくなっただろうな」
般若もしくは鬼神のような形相でそう言い放った一夜。

よく見ると吉田が地に臥している。どうやら俺が殴られる前に一夜が吉田を殴ったらしい。

「和ちん、大丈夫?あいつに何にもされてない?」

先ほどの顔とは違い、優しい顔で問い掛けてくれる。

「うん、俺は大丈夫、ありがとう助けてくれて。」

俺が一夜を守るつもりだったが、結局守られてしまった。

「和ちん、無理しないでよ、直前の会話だけ聞こえたけど、あんな風に啖呵きったら吉田みたいなすぐ頭に血が上るヤツ、どんな行動に出るかわかんないんだから」

「ん、ごめん、何とかして一夜が来る前に片付けなきゃって思って冷静さを欠いちゃって…」

「まあ、そんな事だろうと思ったけどね、だから俺も焦ったんだよ、和ちんの事だから、俺を巻き込まないように無茶してるんじゃないかって。本当は和ちんが捕まる前に守れたら良かったんだけど…情けない幼馴染みでごめんね」

一夜の謝罪をぶんぶんと首を
振って否定する。

「そんな…!俺も勝手に捕まって、勝手に吉田を怒らせただけだし俺の方こそ迷惑かけて…」

「かけたのは、迷惑じゃないよ」

え?と一夜の発言に首を傾げる。
「心配、かけさせないでよ。和也が俺を大事に思ってくれてるように、俺にとっては、和也が大切な幼馴染みなんだから」


その言葉になんだか暖かい気持ちになる。嬉しくて飛び跳ねてしまいそうになる。

「うん…心配してくれて、ありがとう…」


「………オイ、てめぇら…」

あ、吉田の存在を忘れていた。
見れば頬を腫らした吉田がこちらを恨めしそうに睨んでいる。

「あ?まだ何か用あんのかよ、言っとくけど俺はお前の逆恨みに付き合うつもりはない」

一夜が冷たく言い放つ。

「和ちん、帰ろう。吉田、二度と和也と俺に絡むなよ」

俺の手を取って帰ろうとする。

「あ、待って一夜、俺、吉田に言いたい事があるんだ」

そう言うと一夜は訝しげな顔を
したが、特に止められはしなかったので良いだろう。
一夜と手を繋いだまま吉田に
声をかけると、吉田にも不審そうな顔をされた。


「さっきはあんな事言ったけど、それは今のお前の話だからな?」

そう言うと吉田は訳が分からないといった表情を浮かべる。

「お前、あの子分みたいな奴らの事も、無理矢理脅すように扱ってんだろ?勿体ないよ、喧嘩の腕だけでもお前に憧れてついてくる人がいそうなのに。恐怖支配だとしても、お前に逆らえないって事は、多少なりともカリスマがあるんじゃないか?人の上に立ってまとめ上げる才能が。

だから、思い通りにならない事や人をそうやって力ずくで動かそうとするんじゃなくて、そんな虚しいやり方じゃなくて

もっと大事にしろよ。人の心も、自分の心も。

そんで心で繋がり合える人達に
囲まれたら、きっともっとお前は魅力的な人間になれると思うよ。今のお前のプライドなんて、これから手に入るモノに比べたらとっても小さいものだよ。

だから、意地もプライドも取り敢えず今は気にしないで、いつか、ホントに心を大事にできて、ホントに大切なものを手に入れたら、そうしたら
今よりも大きな、独り善がりじゃないプライドを持てば良いんじゃないかな」


するすると言葉が出てきて喋り終わった時には茫然とした吉田がいた。

「あ!なんか偉そうに色々言ってゴメン、でも、本当は魅力がある人だろうに、勿体ないって思っちゃって…」

慌てて弁解すると、吉田はくすっと笑った。

「…いや、良い。お前の言葉は受け取った」

そう言うと、どこかすっきりとした顔で帰っていった。
戸惑いながらも後を追う子分達。

「じゃあ、一夜、俺らも帰ろうか」
声をかけると、

「…和ちん……なんでそう…俺以外の和ちんファンをぽんぽん作っちゃうかな……」

と訳の分からない事を言われた。

それから手を繋いだまま
ふたりは帰路についた。


***


「―――っていう事があったんだ」
和也が話終えると、坂本は

「…和也くんって昔から変わってないんだぁ…」

と言った後に

「…苦労してるね、一夜くん」

ポツリと呟いた。


「でも、なんで俺が「裏番長」なんて呼ばれてたんだ?」

「ああ、それはねー、あの一部始終を見ていた子分達が、俺が吉田を殴った事もびっくりしたらしいんだけど、あれから吉田が人が変わったように優しくなったっていうか男前になっちゃって、
「あの恐ろしい番長に説教をした挙げ句、大変身させてしまった和也さんパネェ!」
ってなって、そいつらが敬意を込めて和ちんの事を「裏の番長みたいだな」って言ったのが切っ掛けで、それを知った吉田も乗っかってそれは正しいなって言ったもんだから、学校中に広まって、
「裏番長」って言葉になったんだけど、噂が広まる頃にはだれが「裏番長」なのか分かんなくなって一部だけが真相を知っていて、
大半は「学校には「裏番長」がいて、悪い事をすると説教される」って語り継がれている話だと思ってるらしいよ。俺はたまたま吉田の子分がそう話してるのを聞いた」


説明を聞いた和也は

「あの頃はまだガキだったから、ちょっと熱血入っただけで…ただの平凡なのに……」

と呟いた。


「なんか、小学生時代の友達の情報によると、吉田のヤツ今族の総長やってるんだって。
結構大きいとこらしいよ」

「へ、へぇー」

「和ちんの事を心の師匠と崇めてるんだって」

「何で!?俺そんな大層な事してないから!」

「んー…正直に自分の悪い所を指摘して、でも人間としては認めてくれて、嬉しかったんじゃあないかな。僕もその人の気持ち分かるし」

同じく和也くんに教えられた人として、と坂本は言う。


「あーぁ、あの時の僕は馬鹿だったなぁ、和也くんを敵にまわしてたなんて、こんなに優しい人、かなうわけないのに」

「なんたって、自慢の恋人だからねぇ」

得意気に笑ってケーキをつつく一夜。

「一体どれだけの人を虜にしてきたのさ和也くん」

「へ?何の話?」

「和ちんは無自覚だから余計大変なんだよぉー、お願いだからこれ以上ファンを作るのはやめてね?坂本までで十分」

「ふふ、僕はファンじゃなくて友達だもん、ねぇ和也くん?」

ピトッ

「あーー!坂本、和ちんに抱きついて良いのは俺だけなの!離れろぉー!!」

「あーもう一夜落ち着いて!千尋くんも、あんまり一夜をからかわないでやってよ」

「からかってないよぉ、和也くんとのスキンシップを楽しんでるだけだよー♪」



ふたりの思い出は
色んな苦しみと
沢山の人の笑顔と、
とても優しい幼馴染み

今は恋人の、大切なひと。

出会えて、良かった
逢えて、嬉しい
そう思うもので溢れている。


END


ど、どうでしょうか…(汗
とにかく「ふたり」への愛は詰め込みました(^_^)
駄文失礼しましたー!



鳩羽様、素敵なお話ありがとうございます!まさかの…まさかの坂本君登場(笑)上手く和也と仲良くなってたんですね。今も昔も、変わらず男前な和也…!
そして変わらず和也溺愛の一夜に心温まりました(*^_^*)私自身久しぶりの『ふたり』に、なんだか初心を思い出させていただきました。そう、この二人が原点なんですよね。いつまでもこの二人のような鳩羽様に愛されるお話を書いていきたいです。
企画にご参加いただきましてありがとうございました!これからもはるうららをどうぞよろしくお願いいたします!

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