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11

「…」

うっすらと目を開けると、自分の上にのしかかるようにして困ったような顔をして真っ赤になっている滝が見えた。

「もう起きたのか…?目覚めがお前からのキスだったら嬉しいけど?」
「…っ、」

慌ててどこうとする滝の後頭部と背中に手を回し、そのまま自分に引き寄せて口付ける。
そこで俺はふと頭の隅に何かしら映像が浮かんだ。


「…?」


はて、何だろうか。多分最近の記憶なんだろう。滝に口付けながらもっとよく思いだそうと映像を手繰る。


『…きくん、起きて。こんなとこで寝てると、風邪引くよ。』
『…う、ん。じゃあ、お前があっためろ…』
『…!』


鮮明に蘇った記憶に、がばりと体を起こすと滝が驚いてぱちぱちと瞬きをした。

「…俺だったのか!」
「え?」

不思議そうに俺を見つめる滝に、ずきりと胸が痛む。



あの日、慣れない演技に疲れた俺はソファに寝転んでうとうとしていた。そこに滝が帰ってきて、風邪を引くからと俺を起こそうとしてくれたんだ。寝ぼけてた俺は誰かを確認するよりも先にその俺を心配する声のあまりの優しさに甘えたくなって。
自分からその声の主の温もりを求めて、キスしたんだ。


「なんで…なんで言わなかったんだよ。…いや、言わせなかったのは俺か…。」


寝ぼけてたとはいえ、自分から仕掛けておいて覚醒したとたん相手が無理矢理したと責めるだなんて。俺って最低以外の何者でもねえじゃねえか。

しょぼくれてうなだれる俺の頬を、滝がそっと撫でてちゅ、とキスをしてきた。

「…されたのは柚木くんからでも、したかったのは事実だったから。自分の浅ましい欲望を見透かされたのかと思ったんだ。」

ごめんね、と謝る滝を、思い切り抱きしめる。
ああ、こいつはどうしてこんなに一途なんだろう。
それに対して俺はなんて馬鹿なんだろうか。役員の奴らの事なんて言えねえ。あいつらよりはるかに劣る最低な自分を過去に帰って抹殺したくなる。


…だけど、それがなければ滝とこうなることはなかったかもしれないと思うと滝をそばにおいた自分を少しだけほめてやりたい。


「滝、ごめんな。もう、二度と間違えないから。自分からしたって、お前からされたって、何度だってキスしたい。」


嬉しそうにほほえむ滝にもう一度キスをして、同じように笑みを返した。



その後、俺は罰ゲームのためだった体験入学を本物にするために編入試験を受けた。当たり前だろ?こんなにかわいい滝を俺のいないところに置いとけるかっての。

アホどももあれから滝にアプローチしようとしてきやがるから牽制のためにも滝から離れるわけにいかねえ。

ちなみに罰ゲームだが、ことの経緯を知ったチームの奴が

『猫被り王道×平凡巻き込まれ健気受け最高!』

などと叫んで付き合いの過程とその後を事細かに説明することを条件にクリアということにしてきやがった。まあ、滝のことをのろけられるからとりあえずはよしとしようか。



今日も俺のそばで微笑む滝を、人目をはばからず抱きしめてやる。


「言ったろ?カモにされちまうぜってな。」
「柚木くんになら、いいよ」


そんな風に微笑んで返す滝に俺はきっと一生かなわない。


カモになったのはきっと俺の方。俺の為ならと言ってくれた滝のように、俺も滝の為なら何にでもなるさ。



今日も俺は、滝が見たいと言っていた笑顔で滝にキスをする。



end
→あとがき

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