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13

「…さぼっちゃったね」


僕は延々と泣き続けてしまって、気が付けばもう二時間目の終わりに差し掛かるところだった。

「…ごめんね、柴島…。僕のせいで、授業…」
「こおら」

しゅんとして謝る僕のおでこを、柴島が軽く突く。

「千代田のせいじゃないってば。俺が千代田といたかったの。でも、今頃超噂されてるかもな」

くすくすと笑いながら僕の頭を撫でる柴島の言葉に、思わず俯いていた顔を上げる。

「そ、そう、だ…!く、柴島、あ、あんなこと、廊下で大声で…っ、そ、それに、そのカッコで…っ!」

そういえば、柴島は僕をここに連れてくる前に皆の前で大声でとんでもないことを叫んだんだった。それに、いくら僕の気持ちを知りたかったとはいえ、頭を坊主にしちゃって、しかもそんなたすきをかけてスカートまで履いて…。

「うん、ああやって皆のいるところで言ったら、俺の言葉は本気だってわかってもらえるかなって…。この格好はね、バカな俺なりに考えた、その、…周りの奴らに、自分が馬鹿にされる格好のつもり…だったんだけど…。…俺、ガキの頃、千代田の事バカにしたから。川島とかからも、いつも千代田は皆にバカにされてるって聞いてて。思い出した今、人からバカにされるってのがどれだけキツイもんなのかってのも知りたかった。」

柴島の言葉に、僕はまた涙が浮かびそうになった。確かに、僕は柴島に『僕の気持ちなんてわかるわけない』と言った。それを、考えてくれるだなんて。柴島みたいな人気者が、人にばかにされる格好を僕のために自らするだなんて。

でもさ、と柴島が続ける。

「…どれだけ周りの奴らに何を言われても、千代田に言われた言葉よりも辛い物なんてなかった」

とても悲しそうに笑う柴島を見て、ずきりと胸が痛む。柴島の言っているのは、あの時半ば八つ当たり的に叫んだ僕の言葉の事だろう。



「…柴島。僕、あの小学生の時の事があってから、自分は人を好きになる権利なんかないって思ってたんだ。だから、柴島に好きだって言われた時も、信じられなかった。そんなわけない、僕なんか誰も好きになってもらえるはずがないからって。キモくてデブな僕が、人から好かれるはずなんかないんだからって。」
「千代田…」
「でもね。そんなこと思いながら、僕、柴島が女の子たちに声をかけるのを聞いて、すごく悲しかった。傷ついてた。
…柴島の事が、好きになってたから、だと思う。」


『好きになる前に』だなんて、言い訳だ。柴島の本気は、僕のかたくなだった心をいつしかゆっくりとほどいていた。



―――――――――柴島を好きになってたからこそ、あの時の子が柴島だったと知ってこんなにも悲しかったんだ。



僕の告白を聞いて、一瞬目を見開いた柴島がぼろぼろとその目から涙を溢れさせた。

「…っ、ごめ…、千代田っ、ごめ、んな…!」
「…もう謝らないで。僕も、ごめん。…君が、好きです。こんな僕でよかったら、どうか付き合ってください。」



柴島は泣きながら何度も何度も頷き、僕に初めてのキスをした。

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