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きちんと思ったことを話して、ちゃんと謝ればそれですむんだと思ってた。傷つけたことは今になってわかるけど、まさかそんなにひどいことをしただなんてあまりわかっていなかった。
後悔が津波のように押し寄せる。
千代田は、すごく大人しいなって思ってた。控えめで、謙虚で、でもちょっと物事をマイナスに捉えすぎじゃないかなって。
元々は明るかった千代田。それがあんな風に根暗だと言われるほどネガティブになってしまったのは、間違いなく俺のせい。俺の心無いいたずらが、千代田を変えてしまったんだ。
俺と一緒にいる間、よく見せていたあの顔は照れていたんじゃない。遠慮してたんじゃない。
自分に向けられる俺の気持ちを、『好かれるはずなんてないのに』とどうしていいのかわからなくて困っていたんだ。
俺が幼い頃に吐いた呪いの言葉は、俺の気持ちを愛しい人の心に届かなくしてしまった。
呪い返しとはよく言ったものだと、自嘲の笑みがもれる。
俺が女の子たちに気のあるそぶりをすると妬いてるのかもだなんて、なんて愚かな、なんて自己中な勘違い。
俺が女の子たちに声をかけるたびに、やっぱりあの時の言葉は本当だったんだと俺の吐く愛の言葉よりも千代田は呪いの言葉を信じたんだろう。
その場にしゃがみ込んで、両の手で顔を覆う。ぼろぼろ、ぼろぼろ。涙が指の間から、あふれてあふれて。
千代田、千代田。ごめん。本当にごめん。
――――それでも、君が好きなんだ。
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