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6

あれは俺が小学三年生の頃。川島たちがよく学校で塾の話をしていた。
そこに来ている、他の小学校の奴がからかいがいがあって面白い、と。ちょっと太めで、でも明るくてそれをからかうとムキになって食ってかかってくるのが楽しいからいつもわざと怒らせるんだと。

俺はそいつの話を聞いて、ある日川島たちについて行ってこっそりそいつを見てみた。
そいつは確かに太めで、でも太ってるくせにそれを言うと怒る。顔を真っ赤にして川島たちに言い返すそいつを見て俺もからかってみたくなった。こてんぱんに泣かせたくなった。

子供というのは残酷だ。
ある日、川島たちが『千代はキモデブだから女の子から好きとか言われたらすぐ本気にするぜ』と言い出した。
それを聞いて俺は一ついたずらを思いつく。
俺は昔からとてもかわいらしい顔をしていたから、よく女の子と間違われた。それを利用して、女装してからかってやろうぜ、と提案したのだ。
塾帰りのそいつの前に、わざと現れて困っていると告げる。そいつは俺の嘘を信じきって、俺が行きたい場所まで連れて行ってくれた。その間、ずっと励まして元気づけようと話しかけてくれた。はぐれないようにずっと手を握ってくれていた。

目的の場所へついたとき、礼を言うとそいつは顔を真っ赤にして満面の笑顔で「よかったね」と言った。その時、俺はそいつに自分がこれからひどいことするのにばかだなぁ、くらいしか思わなかった。この笑顔が泣き顔になるのかな、とか考えてわくわくした。

次の日、塾の近くでそいつの出て来るのを待つ。そいつは俺を見つけると目を見開いて驚いた。俺から話があると声をかけ、川島たちの隠れて待つ公園に連れて行く。

「昨日は助けてくれてありがとう。優しいあなたを好きになっちゃったの」

うつむき加減でそう言うと、そいつは顔を真っ赤にした。

「ぼ、僕も君が好き!」

そいつが俺の嘘の告白に大きな声で嬉しそうに返事をすると同時に、隠れていた川島たちがわーっと歓声を上げて飛び出してきた。


『僕も好き、だって〜!』
『うーわ、きっもー!おい、告白大成功だなあ?』
『あはは、うれしー!けどまじきもーい!』


川島たちと一緒になって、何がなんだかわからないという顔をしているそいつをバカにする。その時のきょとんとした顔が面白くてさらにからかう。

俺が目の前でカツラをとると、そいつはきょとんとした顔から一気に顔面蒼白となった。

『よく『僕も好き』なんて言えたね。なに、自信あったの?おまえみたいなデブが好きになってもらえる訳ないじゃん』

そう言い捨てて、川島たちと笑いながらそいつを放置して帰った。
すごく楽しかった。俺のことを本気で好きなのがわかったから、余計に楽しかった。

俺は川島たちよりもこいつを傷つけることができるんだ。

それに子供の俺はひどく優越感を感じた。

明日もまたからかってやろう。そう思っていたのに、そいつは次の日には塾をやめてしまっていた。川島たちもがっかりしてたけど、俺は川島たち以上にショックを受けた。
そいつと俺たちは学区が違うので、学校を知らない俺たちはそいつに会えなくなった。

そっか。もう二度と会えないのか。

その事実に、どこかぽっかりと穴があいてしまったように感じた。

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