15
明かりはつけないでくれと懇願され、全てが見たいのだと訴えたのだが、恥ずかしがる名村の意思を尊重した。あんなことをしていた自分の想いを受け入れてくれた上に体に触れることも許してくれたのだ。渋々ながら暗闇で名村に覆い被さる。
キスをしながらシャツのボタンに手をかけ、ゆっくり外し始める。それだけでも自分が興奮するのがわかる。ボタンを外すために手が肌に擦れるたび、名村がぴくぴくと小さく反応するのに更に煽られる。
全て外し終わると、前をくつろげながら今度はその首筋にキスを落とした。
「は…、ぁ…、っ、ﾝ…」
軽く啄むようなキスを徐々に下へとずらしていく。鎖骨までたどり着くとまた上へ。そしてまた下へ。首筋からデコルテまでを幾度もキスで往復する。
ただそれだけなのに、キスが落とされるたび、名村の背中にぞくぞくと電気にも似た感覚が走り鼻から抜けるような息が漏れる。
たっぷり時間をかけてそこを愛撫しながら、両手は常に脇腹や腰の辺りをなで回していた。
「あ…っ、じょ、のうち…っ、城之内…！」
ゆるゆると体をくねらせる名村の顔をちらりと盗み見る。赤く頬を染め、羞恥からか目を閉じて嫌々と首を振っているのを見れば腰が重く疼く。
デコルテから今度は胸筋へと口を滑らせる。その頂にある果実は触れもしないのにぷくりと立ち上がっていて、城之内は美味そうだとごくりと喉をならした。
「は…っ、あ！」
びくん！と名村の体が跳ねる。城之内が舌先でぴんと一度だけ乳首を弾いたのだ。
未知の感覚に驚いた名村がおずおずと顔をしたに向け、城之内を見る。
目が合えば、城之内は悪いことを思い付いた時のようににやりとひどくあくどい顔をして口角を上げた。
「うぁ…っ、はっ…、ぁあ…！」
ぴん、ぴん、と断続的に快感が走る。
城之内はただひたすらに、右の乳首をゆっくりと舐め弾いていた。
ソフトクリームでも舐めるように、舌全体で舐め上げ頂に舌先が到着するとぴん！と弾く。
舐め上げられている時はぞくぞくと背中に悪寒に似た感覚が走り、ぴんと弾かれる瞬間はぱちんと電気が弾けたように乳首にぎゅっと凝縮された快感が飛ぶ。
（みぎ、ばっかり…）
城之内は乳首を舐めはじめてから、ずっと右しかしない。乳首に与えられるそれが快感だと認識した名村の体は触られず放置されている左乳首をすっかりしこりたたせている。
じんじんと疼く左をどうにかしてほしい。
無意識に体を傾かせるが城之内は右を追いかけそちら側しか愛撫しない。
「城之内…っ、城之内…っ、ああ！」
訴えるように切羽詰まった声で名を呼べば、ゆるゆると愛撫されていた右の乳首にひときわ大きな電流が走った。しかも、今度はその波がひっきりなしに襲う。
城之内はねっとりと舐めていた右乳首に、口全体で吸い付いていた。そのまま唇をはむはむと食み動かし、その中で固く立ち上がっている乳首を舌でなぶった。
舌先でぐりぐりと押し込み、上下左右にぷるぷると舐め弾き、めちゃくちゃにこねくりまわす。
「ふぁっ、はっ、ｱｯ､ｱｯ、ァンんっ、あーっ、あー…！」
与えられる先程よりも強く激しい愛撫に、体をよじり逃れようとするのをぐっと押さえ込む。
はむっ、しゅぱっ、ちゅぴ…くちゅ、
口を尖らせてちゅうちゅうと吸い、甘ガミをし、舌でころころと転がし、とにかくしつこく右乳首をひたすらに愛撫する。
名村の口からは短い嬌声がひっきりなしに漏れ、びくんびくんと魚のように体を跳ねさせた。
一度も触られないぺニスは勃ちあがって先走りを滲ませている。
放置されている左乳首はじんじんと熱を訴えてくる。
「ひっ、ンッ…、じょぅ、の、うち…ぃ…」
目が慣れてきて、名村が赤くほてった顔で与えられる快感に目を潤ませているのがわかる。
ひどく扇情的な表情に城之内はごくりと喉をならした。
「…名村…、どうした？」
「んっ、ぅ…」
「どうしてほしい？」
わかっていながらに問いかける自分は今悪い顔をしているだろうなと思う。名村がそんな城之内の問いかけに対して羞恥に顔を歪ませ涙を更に浮かべる。ともすれば漏れそうになる恥ずかしい言葉を手の甲で口許を隠し、必死に欲望と戦っている。
「ほら…、名村」
「んっ、んん！」
理性なんて剥ぎ取ってやる、とばかりに城之内が右の乳首に再び吸い付いた。
「ンッ、ｧｯ、あぁっ！ああぁ！」
「ほら、名村…言っていいんだぜ」
「ひっ、ンッ、じょ、のうちぃ…っ！」
「言って…」
先程と同じく、右乳首を、執拗に愛撫する。どれだけ体をよじっても城之内が離れることがなく、延々と右ばかりをなぶられ名村は遂に理性を手放した。
「はっ、ｱｯ､ｱｯ、やっ、右っ、ばっか、やだっ…！あっ、んっ、ひだっ、ひだりもっ、左もっ、してくれ…っ！…っああ！」
懇願を名村が口にした瞬間、城之内は待ってましたとばかりに放置していた左乳首に舌を絡めた。
「ひいっ、ひぃんっ！ああっ、ああ！」
右の時のように始めに時間をかけることなく、最初から口で丹念に愛撫する。待ち望んだ刺激に名村はもっとと言うように胸をそらし、快感に体をわななかせた。
「ひぅっ！」
今度は左ばかりを責められるのかと思いきや、ふいに城之内が右の乳首を指で摘まんだ。そのまま軽く引っ張り、弾力を楽しむかのように緩く揉みしだき、スイッチでも捻るかのように左右に捏ねる。
「ンッ、んくぅっ！、ぃっ、…ッア、あー…！ぁー…！あ…！」
「気持ちいい？こりっこりの乳首、いじめられて気持ちいいか？」
「んんっ、んんぅ！」
左乳首を舌で転がし、右乳首を指で捏ね回し、と乳首への愛撫を容赦なくしながら名村に問いかける。そんな卑猥な問いかけに答えることなどできるはずもない。改めて自分のこの快感がどこから来ているのかを指摘され、恥ずかしさのあまりに顔を更に赤くして涙を浮かべた。
小さかった体の痙攣は大きくなり、シーツを掴む手はぶるぶると震え力が入らない。屹立からは透明な液が滴り、陰嚢や後孔にまで垂れて腰が自然と上下に揺れていた。
「あ…っ、ひっ、いやだ、いや…、う、ふぅ…っ！」
「名村？」
快感だけでなく悲しみに顔を歪ませ涙を流す名村に気付いた城之内が愛撫を止め、名村の頬に手を添える。
いくら許されたとはいえやり過ぎたかと焦りながら宥めるように頬を撫でると名村は自分の顔を隠してさらに嗚咽を上げ始めた。
「こん、な、こんな…、お、俺、はじめて、なのに…っ、お、おんな、みたいに…ち、乳首でこんな感じるなんて」
たどたどしく理由を告げる名村に城之内は更に煽られた。
普段、性には全く興味がありませんとでもいうような涼しい顔をした強面が、快楽に溶けた顔で涙を流している。
あんなにも平凡だとバカにしていた相手の初めての一面にもっと混乱させてやりたいと悪い心が頭をもたげる。
「初めてでそんなに感じてくれて俺は嬉しいけど？」
「う、れし…？」
「ああ。だって、俺で名村は感じてくれてる、気持ちよくなってくれてるってことだろう？感じないと言われる方が悲しいし辛い。お前がほしいが自分だけが気持ちいいセックスがしたいわけじゃないんだ。お前に俺を感じてほしい」
「…」
微笑んで触れるだけのキスをする。離れて名村を微笑みながら見つめると、名村は震える手でそっと城之内の両頬を挟んだ。
「…なら、もっとしてくれ…。こんな俺の姿に、引かないなら」
お前を感じたい、と呟いた後に名村から仕掛けられたキスに城之内の理性は弾けとんだ。
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