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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




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ムルムル様リクエストの、『生徒会長×風紀委員長』です!風紀委員長は厳つめ、嫌われからの甘甘、エロありです。
大変遅くなり申し訳ありません…!

※18禁、強面受けです。苦手な方はご注意ください。
頑張ります!ではどうぞ♪



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ここは山奥にある閉鎖された全寮制の男子校。小中高、望むならば大学まで一貫で統一され、許可のない限り外界との接触の許されないこの場所は、政界や大企業の御曹司たちがスーパーエリート教育を受ける事を目的として作られており、相応のレベルの高い学校だ。
それ故に、集められた子どもたちを優秀な指導者に育てるべく、学校の運営をこの学校では生徒たちに任せており、ある意味独自の国家として成立していた。

その国の中心は大きく二つの組織からなり、1つは生徒会。そしてもう1つは風紀委員だった。
それぞれの頂点、生徒会長と風紀委員長はいつの時代も眉目秀麗、才色兼備、超のつくほどの大企業の御曹司。そして、それは現代も続くものだった。

生徒会長においてのみは。

「おい、何をしている」
「げっ!…あ、なんだ。エセ委員長か」

校舎裏で喫煙者を見つけ、注意のために近づいた風紀委員長にそれが誰かに気付いた瞬間焦りを消してバカにして見下す不良。それを意にも介さず全く表情を変えずに近づく委員長に不良たちはニヤニヤとバカにした笑みで立ち上がりわざとらしくタバコを吸う。

「エセのくせにいっちょまえに風紀委員長ぶってんの?ウケる〜」
「ああ、そうだ。エセでもなんでも風紀委員長なんでな」
「え〜?誰からも認められてないって有名なのに?」

ふうっとタバコの煙を吹き掛け、同時にゲラゲラと笑いが起きる。だが、当の委員長は全くもって動じず、表情を変えない。

「それだけ有名なら、俺がどういう資格を持っているかも知っているはずだな?さあ、足腰立たなくさせられて連行されるのと大人しく着いてくるのとどちらがいい?」
「…っ」

バカにしていた不良どもから笑みが消え、さっと全員の顔色が青くなる。ひそひそと耳打ちをしたあと、軽く舌打ちをしながらタバコを消して歩き出したのを見て風紀委員長…名村定義(なむらさだよし)は風紀室に連行すべくその後を歩き出した。


名村は、この学園の『権力者の頂点は美形でなければならない』との暗黙の定説を打ち破った初めての男だ。筋肉質でがっしりとした体、彫りが深くキリリとした眉につり上がった目、普通にしているのに常に怒っているように深く刻まれた眉間のシワ、ぐっと引き結ばれた意思の強そうな口。堅気ではないと勘違いされること数知れず。いわゆる強面と呼ばれる分類の顔をした名本は美形が尊重されるこの学園において異端児と見なされ周りから敬遠されていた。

学園の生徒会、風紀委員は主に生徒からの投票によって決められるのだが、そのトップのみそれぞれの前任からの指名制だ。

『俺のあと、名村』

前風紀委員長が後任指名の全校集会のときに指名した人物にその日学園中に驚きの声が響いた。
名村自身、面を食らった。
まさか自分が指名されるなどとツユほども思わなかったのだ。

前風紀委員長とは、名村が一年の時に知り合った。その風貌のために喧嘩を吹っ掛けられ、大勢の不良に囲まれているのを前風紀委員長が発見したのだ。乱闘がこれから起きるであろう一触即発、そんな空気の中、誰か一人でも動けば現行犯で捕まえてやる。そう思い息を潜めて様子をうかがっていれば、何やら不良どもの顔が徐々にさも楽しげになってくる。
しまいには、不良たちは名村の肩を叩いたり組んだりととても親密に振る舞い出したのだ。

そのうちバラバラと思い思いに散っていく不良たち。全員笑顔で名村に向かいじゃーななんて手を振っている。

一人残った名村の前に姿を現した前風紀委員長は真っ直ぐに疑問をぶつけた。

『…?ただ、話をしただけですけど…』

名村はあれだけの人数に取り囲まれながらも全く動ずることもせず、ただふと目について気になった、相手が身に付けている物について質問しただけなのだと言い張った。

たまたまだろう。だが、そこから相手にあれだけ気を許させるにはかなりのカリスマが必要なはず。事実名村はそれを切っ掛けに学園の不良たちと普通に友好な関係を築いたのだから。

それに前風紀委員長が目をつけないはずがない。そこから前風紀委員長は何かと名村をかわいがった。接してみれば名村の人の善さに真の意味で心を許すのは早かった。
だが、この学園はいかんせん基準が美であったり財力である。そんな中、名村はその見た目と飄々とした態度に不良の仲間と誤解され、特に生徒会から嫌われていた。
それでも、この学園において名村以上に不良たちと普通に友好関係を築いているものはいない。

それが名村にとってとてもしんどいことであるとわかってはいても、前風紀委員長は、名村の真に賭けたのだ。

名村は、前風紀委員長の心を汲んで辞退はしなかった。周りから暗に辞退を迫られようと風紀委員長をやり遂げると決めたのだ。

「失礼する」

コンコンとノックした後、短い返事を聞き重い扉を開く。中にいた人間たちは名村を見るなり嫌悪感を隠そうともせずに態度を露にして名村を見下した。

「書類を受け取りに来た」
「…」

生徒会長…城之内さくら(じょうのうちさくら)はちらりと一瞥をくれただけで無言で名村に書類を差し出した。

「ありがとう。さすが仕事が早いな」
「当たり前です、誰だと思っているんですか?不良とチャラチャラ遊んでいるあなたと違って城之内会長はきちんとしているんです。
大体、それはあなたが巻き込まれた事案でしょう。風紀委員長のくせに問題を起こすだなんて論外ですね。さっさと辞任してはいかがですか?」

顔も平凡以下ですし、と続いた言葉のあと、会計や庶務からくすくすと笑い声が起こった。

「…そこの書類に書いてあった通り、ただ校内で違反者を取り締まっただけなんだがな?風紀としての仕事を問題視されるのであれば風紀委員はその存在価値がないことになるな」
「…っ、存在価値がないのはあなただけでしょう!前風紀委員長は皆から慕われてましたがあなたは逆に嫌われてますからね!」
「柏葉…だまれ」

名村の反論に顔を真っ赤にして負け犬の遠吠えよろしく名村をけなす副会長を、城之内が一言で制する。副会長ははっとして唇を噛み締めて名村から顔をそらして己の机に向かい、名村は声を発した城之内を見た。

「しょうがねえだろ。トップは前任の指名ってのが決められてんだ。いくらふさわしくなくても従うべきしかねえ。もっとも…こんな風に委員としての仕事を問題視扱いされるような委員長では、そのうちリコールされるだろうがな」
「…そうだな。そうならないように尽力するよ。警告ありがとう」
「…」

全く動ずることなく返答し、書類を手に生徒会室を出ていく名村の背中を誰もが睨み付けていた。

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