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「#幼馴染」のBL小説を読む
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9

「ん…」

ふと目が覚めると、辺りは真っ暗だった。柔らかな感触に、ベッドに入っているのだと気がついたが、それだけじゃなかった。
目の前に、たくましい胸。
そっと顔を上げれば、俺を包み込むように抱きしめながら眠る高見沢の顔があった。

「…高見沢…」

体はべたべたしていない。高見沢が気を失った俺を綺麗にしてくれたんだろう。
いつもしてくれている事だけれど、なんだかそれが妙に嬉しくてきゅんとする。

じっと、眠る顔を見つめる。
通った鼻筋、薄い唇。柔らかなキャラメル色の髪。ほんと、イケメンだなあ…。

高見沢の顔をみていると、好きっていう気持ちが溢れてきてたまらなくなって、そっと体を伸ばして触れるだけの拙いキスをした。

離れる瞬間、触れるときに閉じていた目をゆっくり開けるとばっちり目を開けた高見沢と目が合う。

「ひゃっ!?」
「ほんと、かわいいことしてくれちゃって…」

びっくりして変な声をあげて飛び起きそうになった体をそれよりも早く引き寄せられ、またその腕の中に閉じ込められる。

「まだ夜中だぜ。眠りな」
「あ…」

ちゅ、とおでこにキスをされ、優しく頭を撫でられる。

「あの…」
「うん?…ああ…そっか。あのな、千里。抱く前にも言ったけど、俺は色々間違えたって言ったよな。これもその一つだ。確かにそんなかわいいことされちゃ、理性も吹っ飛びそうになるけど…何より、千里はそんなつもりでしたわけじゃないだろ?俺だって、毎回毎回そうなるわけじゃなくて、そうじゃなくほんとはこうしてお前と触れ合って眠るのが幸せでたまらないんだ」

俺が何を聞きたかったのかをわかってくれた。
今まで、高見沢はさっきみたいなことをすればすぐに『誘ってんのか?』なんて言って違うという意見なんて耳にも止めず、俺は問答無用で押し倒されていた。

そうじゃなく、ただふいにいちゃいちゃしたくなるときだってあるわけだけど、そんな意見なんて聞いてくれなかったのに。

「…高見沢…」
「ん?」
「…俺も、ただこうして高見沢と眠るの、好き…」
「…そっか」

幸せで、幸せで。
久しぶりに俺は安心感に包まれ、ゆりかごに揺られたような気分で眠りに落ちた。


互いに気持ちを確かめあった日は金曜日で、土日は休みなのになんで高見沢はあの時に次の日の土曜日じゃなくて『明後日の休みにデートを』と言ったのか不思議だったけど、その理由は目が覚めた朝にわかった。
高見沢は先に目が覚めていたらしく、朝御飯の用意をしてくれていた。テーブルについて二人で食事をし、片付けをし、そのまま二人でまったりと食後を過ごす。
時折頭を撫でたりしてくるけれど、エロい雰囲気に持ち込む空気なんて一切ない。
こんな何でもない休日を過ごすなんて、友人の時以来かもしれないとふと考えた。そして、気がついた。

高見沢は、今まで間違っていたと言った。本当にやりたいことをやると。つまりそれは、休みの日に、高見沢はこうして俺と何気なくまったりおうちデートをしたかったということ。

「…へへ…」

よかった。


俺の価値は、体だけじゃなかった。


そして、まったり土曜日の次の日。日曜日のデートは、最高に楽しかった。

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