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「#幼馴染」のBL小説を読む
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6

「千里」
「…」


そのあと、手を引かれて部屋につれられた俺は寝室のベッドに座らされ、その向かいに高見沢は床に膝をつけて座った。

なにか言われるのかな、と思ったけど向い合わせで俺を見上げたままなにも言わない。でも、責めてるような感じじゃなくて、じっと優しい目で見つめられ、何を話せばいいのかわからなくて視線をさ迷わせる。

…高見沢が話さないなら、俺が話してもいいかな。今なら、聞いてくれるかな。

「…あの…」
「ごめんな、千里」

同時に口を開いてしまって、お互いに驚いて目を見開いてしまった。
今、高見沢、謝った?
なんで?

「俺、余裕なくてさ…」

そっと手を握り、俯いて眉を下げる高見沢は何かに後悔しているようだった。
なんだろう。余裕ないって、なにが?高見沢が謝ってるのは何に対してなの?

「ど、したの、急に…」
「…さっき、四天王寺会長に会ったんだ。正面から来た会長がさ、俺を見てめっちゃ笑いながら『よう、変態』って…」

かかか、会長、なに言っちゃってんの!?普通の人はいきなりそんなこと言わないのよ!?ってか、俺が資料室出たときにはまだその中にいたよね?

「肩を組みながら、『爽やかぶってても、やっぱ男なら誰でも同じだな。好きなやつといたら遊びなんざ二の次、一日中ヤって啼かせたくなるよな?』なんて言われさ。なんだこの人って思ったんだけど…笑ってるはずの会長がさ、笑ってなくて。そのあと、続けて言われたことで俺、また間違えたって気付いて」


勘違いをするなよ。俺たちが変態でいられるのは、相手が受け入れてくれてるからだ。許してくれてるからだ。それを当たり前だと思うな、自分のやってることが全部正しくて相手のためだとか思うな。俺たちの行為は相手ありきの行為だ。ただのエゴの押し付けになるなよ。その行為を相手も当たり前に望んで喜んでいるなんて思うなよ。自己満足を満たすためだけの行為はただの性処理にしかならねえぜ


「…頭を打たれた気分だったよ。会長に言われて、俺、今までのことやついこないだの事を思い出して…。
俺のやったことで、千里はもしかして傷ついていたんじゃないかって初めて思ったんだ」

胸が、痛い。

辛くて、じゃない。
目の奥が熱い。こらえなきゃって思うのに、頭と体が全く繋がってくれなくて、息をするので精一杯だ。

「言い訳をさせてくれ、千里。さっき余裕がないって言ったのは、俺が勘違いをしてたからなんだ」
「かん、ちが…?」
「そう。あのさ、お前は腐男子だから、その…色んな男同士のセックスの知識があって、その本の主役たちを理想にしてるんじゃないかって…。俺、BLとか、全くわからなくて…。千里を喜ばせるのは、千里が楽しいと思ってくれるには、何が一番いいんだろうって思ってたんだ。それで…、
…、多分、間違えたんだよな。ごめんな、千里…」

優しく頬を包まれ、堪えきれずにぼろぼろと涙がこぼれ落ちる。震える手をあげて、頬に触れる高見沢の手に触れれば、動物の親子や兄弟がするように鼻の先をすり、と擦りあわされた。

「その…無茶苦茶に抱いたりしたのは、会長の言うように千里だからやりたくなったのも確かで…でも、そうやってあの手この手で千里を引き止めてようと必死だったんだよ。飽きられたくなくて、腐男子の千里をどうやったら満たしてやれるかって。
でも、違ったんだよな。千里の萌える本なんかの通りじゃなくて、俺が考える俺自身のやり方で千里を萌えさせてやればよかったんだよな。だからさ、千里。
もし修正がまだきくなら…やり直しをさせてくれるなら、明後日の日曜日、俺とデートしてくれませんか?」

言葉なんかひとつも出せなくて、うんうんって頷くしかできなかった。

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