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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「忠告しとこうと思って」

ちょっとだけなんだかバカにしたような顔をして俺に対峙するこの子は、俺と高見沢がまだ体を繋げていないとき、その事が原因でぎくしゃくした間に高見沢といつも一緒にいたかわいこちゃんだ。
詳しくは晴彦も高見沢も教えてくれなかったけど、最後にこの子に会ったのは高見沢と初めて体を繋げた次の日で、高見沢がこの子になにかを言って、この子が悔しげに唇をかんでどっかにいったあの時だ。

「あの…」
「君がかわいそうだから。君、高見沢くんに恋人として扱ってもらってると思ってるけど、違うから」

うええ、なに言い出すのこの子!

「えっと、えっと…」
「君、腐男子ってやつだったよね。それで、一組の羽曳野くんもだよね。僕、聞いたんだから。高見沢くん、羽曳野くんの読んでる本見て、羽曳野くんに聞いてたもん。『こういうのって楽しいのか』って。高見沢くんはね、君が腐男子だから、興味のある普通とは違うプレイを楽しめるから、君を恋人だって言ってそれを楽しみたいだけなんだよ」

羽曳野…、カミングアウトしたからって教室で堂々と読むのってどうよ。
いやいや、そこは今はどうでもいい。
高見沢が、羽曳野の読んでた本を見て興味を持った。だから、その本のプレイをしてみたくて俺を選んだ。俺が腐男子だから。羽曳野に聞いたら、腐男子はそういうのが楽しいと言った。なら平気だろうから。抵抗はないだろうから。

…どうしよう。否定したい。したいけど、できない。
だって、それは俺がずっと考えて今正に落ち込んでいた事だから。四天王寺会長と晴彦に言われる前だったならこれを信じていたかもしれない。けど、今はこの子の言うことがその通りだとは思わない。
だけど、肝心の高見沢になんにも話ができていない今、この子の話を『絶対に違う』って否定するだけの自信がない。

じゃあ、俺が答えられることは?


「…あの、さ、」


俺の、出せる答えは?


「…そう、だとしたら、」


俺は。


「それを他のやつじゃなくて、俺にしてくれるなら、いいかな…」


前の時も、結局そうだったなあ。さんざん悩んで、苦しくて、悲しくて、でもどうしたってやっぱり俺は高見沢が好きで。

『愛してるやつがいる男なら誰でもなるもんだ』

四天王寺会長の言葉は、俺にだって当てはまる。
俺だって、高見沢が好きだから、高見沢限定で変態でも淫乱でもなれるんだ。

高見沢も、そうだといいな。たとえ言葉だけでも、うわべだけでもそう言ってくれるなら、それでもういいや。

「バッカじゃないの!」
「ほんとにな」

思い切りバカにして叫ばれた台詞のあとに続く、呆れたような声色は俺の真上から聞こえた。

真上からってのはあれだ。背中にぴったりとくっついて抱き込まれて、俺の頭の上に顎が乗せられているからである。
頭ひとつ分も身長違ったっけ…

「高見沢」
「はいはい。千里の愛しい恋人の高見沢くんですよ」

名前を呼べば、おどけたように返事をしてちゅっとほっぺにキスをされた。
わあ、なになに!?
なんだか異様に甘ったるい雰囲気で俺を包み込んでくるんですけど!?


「まったく、油断も隙もない…。まさか千里にそんな変なこと吹き込まれるとは思わなかった。まあ、自業自得な部分がありすぎるんだけどさ」
「へ、変なことって、僕は、そんな…た、ただ、彼がその…」
「前に言ったよね?俺は千里を愛してる。愛してる以上もしかしてなんて起きないって。不安を煽るようなことを言わないでくれよ。ただでさえ俺はマイナススタートで千里の友達から監視されてんだから。これで千里が泣いたりしたら俺、二度と千里に会えなくされちまう。そしたら俺は君を恨むよ?こないだのことだって許してる訳じゃないんだ」
「…っ」

最後の方の台詞は、聞いたことがないくらい冷たい声で目の前の子はかわいそうなくらい真っ青になって慌てて駆け出して行ってしまった。


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